野田秀樹が芸術監督に就任以降、積極的に次世代の演劇界を牽引する若い才能による作品を上演してきた東京芸術劇場。その中でも2013年に上演されたこの『cocoon』は一際大きな反響を呼び、再演を熱望されてきた。
作・演出の藤田貴大はマームとジプシーを主宰。2012年に26歳で岸田戯曲賞を受賞。劇団公演以外にも昨年は野田秀樹作の『小指の思い出』の演出を手掛けるなど、現在の演劇界でもっとも注目を集める存在。また演劇以外のアーティストたちとの作品作りにも積極的で、本作もそんな活動のひとつ。
原作は漫画家・今日マチ子による文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品を受賞した作品。沖縄戦に動員された少女たちに想を得て描かれたもの。女学生たちのかしましくも平凡な学生生活が戦争によって否応なしに死と隣り合わせの日常に変わっていくさまが描かれている。
テーマとしては重いこの作品を藤田は象徴的なシーンを繰り返す「リフレイン」という手法を用い、生々しさや切実さを削ぐことなく、それでいて悲惨な状況の中でも生きようとする少女たちの姿を描ききった。
初演から2年経った現在、この作品がどのような受け止められ方をするのかも気になるところだ。