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あひるなんちゃら恐るべし『今度は背中が腫れている』あひるなんちゃら

2018.02.20 Vol.703

 自らの作品を「駄弁芝居」と評し、その言葉に偽りなしの駄弁を駆使し約80分というちょうどいい時間に合わせて一本の芝居に仕立て上げる。

 冷静に考えると実は結構大変なことなんじゃないかと思うのだが、それは勘繰り過ぎなのかもしれない。

 彼らの芝居を見ていて、とにかくさまざまな局面で感じられるのは「自然体」とか「脱力」といった単語。実は演劇においては脱力することは結構大変なことであることを考えると、ひょっとしたらすごいことをしているんじゃないかと思うのだが、その辺は見た人に判断していただきたい。

 今回の『今度は背中が腫れている』というタイトルは前回公演のアフターイベントで観客から意見をもらって決めたものとのこと。取りあえずはタイトルに合わせた話を目指しているはずだが、ひょっとしたら全然違う話になっているかもしれないので、ここはあまり気にしなくていい。

 リリースをよく見ると「駄弁芝居」のほかにいつの間にか「対象年齢2歳以上」という紹介も載っている。未就学児童は無料とのことなので、子育てでなかなか外出できないお母さんたちも気にせず見られるお芝居。

 ちなみに紹介記事を書こうと思えば思うほど、こちらも駄弁になっていくという駄弁スパイラルにこの記事は陥っている…。あひるなんちゃら恐るべし。

あひるなんちゃら『今度は背中が腫れている』
【日時】3月1日(木)〜3月5日(月)(開演は木金19時30分、土15時/19時、日13時/17時、月15時/19時30分。開場は開演30分前。当日券は開演45分前前)
【会場】駅前劇場(下北沢)
【料金】予約あり 一般2000円、学生1000円/予約なし 一般2500円、学生1500円。※未就学児童は無料。全席自由席・日時指定・受付時に整理券を配付。学生は要学生証提示。
【問い合わせ】あひるなんちゃら(TEL:03-5945-3533 [HP] http://www.ahirunanchara.com/ )
【脚本・演出】関村俊介
【出演】根津茂尚、篠本美帆、田代尚子、野村梨々子/石澤美和、澤唯(サマカト)、澤原剛生(劇団普通)、園田裕樹、堀靖明、松木美路子、宮本奈津美(味わい堂々)、ワタナベミノリ(ECHOES)

マンガのすごさを改めて体感 手塚治虫生誕90周年記念『MANGA Performance W3(ワンダースリー)』

2017.11.28 Vol.700

 手塚治虫の生誕90周年のアニバーサリーにあたる2018年。それを控えて現在、彼の初期の代表作である『W3(ワンダースリー)』が最先端のエンターテインメントとして蘇っている。個性あふれる3人の宇宙人と、正義感に満ちた地球人の真一が出会い、地球の存亡をかけて悪と戦うSF活劇を、年齢や国籍を問わずに楽しめる“MANGA Performance”で表現、毎夜、オーディエンスを楽しませている。

“MANGA Performance”は、可能な限りセリフに頼らない演出を特徴としている。ダンスやマイム、マジック、アクロバットといった身体的なパフォーマンスに、漫画ならでは表現やプロジェクションマッピング、パペットや音楽などを融合させて展開する。マンガのページをめくるように展開する演出の数々に観客は圧倒、かつ感動しているというのだ。

 今月3日に幕を開け、すでに多くのポジティブな感想が伝わってきている。日本のポップカルチャーをけん引してきたマンガのすごさを改めて体感して。 

これまでにない挑戦的な作品 ONEOR8『グレーのこと』

2017.11.24 Vol.700

 今年、劇団20周年を迎えたONEOR8。4月に『世界は嘘で出来ている』を再演後、沈黙を守っていたが、今年3月にオープンした浅草の新劇場・九劇のこけら落し公演のラストを飾る形で新作『グレーのこと』を上演することとなった。

 作・演出の田村孝裕はありふれた日常的空間を舞台に、そこで暮らす市井の人々のなんてことのない日常を淡々と描く作品が多いのだが、今回はちょっとばかり趣が違う作品となる。

 舞台はどこかの会議室。そこでは裁判員制度で集められた裁判官たちが議論しているように見えるのだが、よくよく話を聞いてみると彼らが話しているのは「死者について」。そこは現世とあの世の間にあるグレーな世界。彼らは閻魔のような存在で死者が来世に何に生まれ変わるべきかを話し合っていた。議論が進むにつれ、根源的でありながら、“グレーなこと”があぶりだされていく。

 舞台設定など、これまでにない挑戦的な作品となるが、根底に流れるONEOR8のテイストは多分変わらない。
 客演の羽田美智子は実に12年ぶりの舞台出演。こちらも大きな話題となっている。

離婚を考えている人におススメ !?『相談者たち』城山羊の会

2017.11.23 Vol.700

 CMディレクターの山内ケンジが2004年に「CMディレクター山内健司の演劇」として演劇活動を始め、2006年に「城山羊の会」を発足。もう13年になるのだが、その間、「つまらなかった」という感想はほとんど聞いたことがない。高いレベルの作品をコンスタントに発表し続けているのは驚異的。

 山内の作品は人間関係を深く鋭く、そしてユーモアに満ちたセリフで描き切る大人の会話劇。

 今回は「別れ話」についてのお話。山内曰く「人間には簡単に別れられる人間と、とても苦労して別れる人間の2種類がいる」と。別れといってもいろいろあるが、今回取り上げるのは「離婚」。それも苦労して別れるほうの人間を中心に描く。

 この一番イメージしやすい別れを題材に「なぜこれほどまでに苦労をするのか」といったことを一緒に考えていく作品になるという。

 今、離婚を考えている人におススメ——できるかどうかは定かではないが、一助にはなるかもしれない? なるんじゃないかな? そのへんはご自分で判断を。

【インタビュー】生誕40周年記念ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』で全国の女性を元気にしたい?

2017.11.08 Vol.699

 脚本・演出家でAV監督のペヤンヌマキが女だけの集団や女同士の関係におけるさまざまな“ブス”な実態を描く、演劇ユニット「ブス会*」。その特別企画ともいえる「ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*」による『男女逆転版・痴人の愛』が12月8日からこまばアゴラ劇場で上演される。

今見るべき舞台『「表に出ろいっ!」English version“One Green Bottle”』

2017.10.26 Vol.699

 2010年にNODA・MAPの番外公演として初演された「表に出ろいっ!」が英語版となって上演される。

 登場するのは父、母、娘の3人家族。その夜、3人はそれぞれに絶対外出しなければいけない用事があったのだが、飼い犬が出産間近とあって、誰かが家に残り面倒を見なくてはいけなかった。それぞれあの手この手を使ってなんとか自分だけは家を出ようと画策する3人だったが、その場その場で形勢はころころと変わり、誰も抜け出せないまま時間だけが過ぎていくのだった。

 それぞれが他の2人を欺くための策略がドタバタコメディーのようで笑いを誘うのだが、やがてそれぞれが「信じるもの」が明かされていくうちに、笑いの裏に隠されたテーマが浮き彫りになってくる。

 初演時は父に十八代目中村勘三郎、母に野田秀樹、そして当時はまだ“若手女優”といわれていた黒木華と太田緑ロランスがWキャストで娘役という豪華なキャスティング。

 今回は『THE BEE』に出演するなど、野田が最も信頼を寄せるキャサリン・ハンターとグリン・プリチャード、そして野田という布陣で送る。

今見るべき舞台『出てこようとしてるトロンプルイユ』ヨーロッパ企画

2017.10.15 Vol.699

 かつてはSF的なシチュエーションの中で巧妙に伏線を張り巡らせた会話を展開するコメディを得意としていたヨーロッパ企画。しかし映画化された『サマータイム・マシンブルース』以降は会話より構造で見せる笑いへシフトチェンジ。
 最近では「迷路コメディ」「ゲートコメディ」というように物語性よりも「企画性」に重点を置いた作品が多くみられるようになっている。

 とはいっても、もともとの会話の妙とか物語性をおろそかにしているわけではなく、企画性はあくまでプラスオン。それは昨年上演された『来てけつかるべき新世界』で作・演出の上田誠が第61回岸田戯曲賞を受賞していることでも明らか。

 今回はだまし絵をめぐる「だまし絵コメディ」。トロンプルイユというのはだまし絵のことだそう。これまでの作品の中でも予想のつかなさでは群を抜く?

 関東エリアでは東京公演のほかに横浜公演(11月16〜19日、KAAT芸術劇場 大スタジオ)もある。

【STAGE】日本のラジオ『カーテン』

2017.09.29 Vol.698

 今後の飛躍が期待される若手劇団を集めて贈る、三鷹市芸術文化センターの「MITAKA“Next”Selection」の第2弾。

 この「日本のラジオ」の作品は、古典や実際に起きた猟奇事件をモチーフとし、性的倒錯者やセクシュアルマイノリティーといった個性的なキャラクターを登場させ、物語よりも言葉と関係性を重視し描いているのが特徴。

 残酷な世界を描きながらも「観劇後にさわやかな気分になる」という感想も多いことから、劇団のキャッチコピーが「さわやかな惨劇」となっている。

 代表で作・演出を務める屋代秀樹の「舞台と客席を隔てるのが嫌」という考えから、普段はギャラリーでの上演が多かったのだが、「どうしても劇場でなければ成立しないアイデア」があったところに“Next”Selectionの話があり、そのアイデアを作品化したという。

【STAGE】KAAT×PARCOプロデュース『オーランドー』

2017.09.22 Vol.698

 本作は、20世紀モダニズム文学の重鎮で最も有名な女流作家のひとりであるヴァージニア・ウルフの代表作を、アメリカの劇作家サラ・ルールが翻案したもの。サリー・ポッター監督の映画「オルランド」(1992年)でも知られる人物オーランドーを、現代的に生き生きと描き、「愛とは」「人生とは」「運命とは」といった永遠のテーマを問いかける。

 オーランドーは16世紀のイングランドに生を受けた少年貴族。エリザベス女王をはじめ、あらゆる女性を虜にする美貌の持ち主だったのだが、初めて恋に落ちたロシアの美姫サーシャには手ひどくフラれてしまう。傷心のオーランドーはトルコに渡り、その地で30歳を迎えたのだが、彼は一夜にして艶やかな女性に変身してしまうのだった。

 オーランドーの数奇な運命を通じて“真の運命の相手には時代も国も性別も関係なく巡り合えるはず”というヴァージニア・ウルフの強いメッセージが描かれている。

 オーランドーを演じる多部未華子らわずか6人の俳優が、16世紀から20世紀という長い時間をまたぎながら20以上の役を演じる。

【STAGE】T FACTORY『エフェメラル・エレメンツ』

2017.09.21 Vol.698

 2010年の30周年以降、川村毅はひとつのテーマを掲げ、そのテーマに基づいた作品作りを長いスパンで続けている。そしてこの2017年からの数年間は「自身の原点を再考する」新作を創っていくという。

 川村は33年前、23歳の時に近未来、軍事用アンドロイドの人間への反乱を描いた『ニッポン・ウォーズ』という作品を書いた。当時としては荒唐無稽のSFでしかない話だが、今はAIと人間の共存というテーマがよりリアルになっている。そんな時代にもう一度、同じテーマで新作に取り組む。ヒューマノイド・ロボットの生命と感情を問いながら、人間というものをもう一度問い直す作品となるという。

 公演期間中の23日(土)19時30分と24日(日)13時に『ニッポン・ウォーズ』のリーディング公演もある。第三エロチカの看板俳優だった宮島健と川村が、初演と同じ役で出演するという貴重な公演だ。

【STAGE】ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』

2017.09.10 Vol.698

 ブロードウェイミュージカルの新作が日本上陸。時を超えて愛され続ける名作「ピーターパン」の誕生に隠された、作家とある家族の実話を描く。本作は、ジョニー・デップの主演した映画『ネバーランド』をベースにしている。 

 舞台は19世紀後半のイギリス。劇作家のバリは父親を亡くし傷心の少年ピーターと出会い、交流を深めていく。物語の中に希望を見出して成長していく少年やその兄弟の姿から、バリも劇作家としての原点を思い出し……。

 ゲイリー・バーロウによる楽曲はドラマティックで空想想が膨らむ、『ヘアー』や『ピピン』を手掛けたダイアン・パウルスによる演出、セリーヌ・ディオンやシルク・ドゥ・ソレイユに携わったミア・マイケルスによる振付など、最初から最後まで見逃せない場面ばかり。

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