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STAGE | TOKYO HEADLINE - Part 15
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さいたまゴールド・シアターのリスタート的な公演『薄い桃色のかたまり』

2017.09.08 Vol.697

 さいたまゴールド・シアターは彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督だった蜷川幸雄氏が2006年に創設した、55歳以上の劇団員からなる演劇集団。

 旗揚げ当初は日本の第一線で活躍する劇作家の新作書き下ろし作品を蜷川氏の演出のもと多く上演。2013年には海外公演を成功させるなど大きな話題を集めた。

 昨年5月に蜷川氏が逝去された折にはその存続に注目が集まったが、蜷川氏の遺志を継ぐ形で存続。今年4月の一周忌追悼公演を経て、今回はいわばリスタート的な意味合いを持つ公演となる。

 本作は2007年の第1回公演、2011年の第5回公演と2度新作を書き下ろした岩松了が3作目の新作書き下ろし。

 作品のモチーフとなるのは「福島」。これは生前の蜷川氏と岩松の会話の中で持ち上がったもの。こちらもその遺志を継ぐ形で、岩松は演出も担当する。

 今年5月にも東日本大震災をモチーフとした『少女ミウ』を書き下ろした岩松。そのときは若い俳優を通して福島を描いた。世代が違えばとらえ方も変わる。平均年齢78.0歳という俳優たちを通し表現される福島はどういったものになるのかにも注目。

【インタビュー】「艶∞ポリス」主宰・岸本鮎佳 今、小劇場界を席巻するユニット

2017.09.07 Vol.697

「ファッショナブル」とか「都会的な」といった形容詞がつくと「はあ?」という反応をする人も多いだろうが、実際そうなんだからしようがない場合もままある。それが「艶∞ポリス」。今、小劇場界を席巻するユニットだ。その作品を紹介するときによく言われるのが「都会的な笑い」という単語だというのは主宰で作・演出、そして俳優としても舞台に立つ岸本鮎佳。

【舞台】風琴工房『アンネの日』、 詩森ろばに注目!

2017.09.02 Vol.697

三鷹市芸術文化センターの名物企画 

「MITAKA“Next”Selection」といえばこれまで次代を担う劇団が多く選ばれている印象。この風琴工房は歴史も実績もあり、一見「Next」という言葉には似つかわしくないと思う人もいるかもしれない。しかし主宰で作・演出の詩森ろばが「2011年に忘れがたい震災があり、わたしの演劇は変化しました」というように、それ以降、作品が大きく変化。前作の『penalty killing −remix ver.−』では劇団史上最多の観客を集めるなどまだまだ進化し続けている。

 そんななか詩森は2018年からは風琴工房という名を置き「sereal number」という名義で活動するというから、今回の「Next」は風琴工房という劇団のことではなく、詩森にあてられた言葉なのかもしれない。

 今回は女性開発者たちによる生理用ナプキン開発の物語。実際の開発現場などを取材しながら、出演者は全員女性という布陣で女でしかない事象に真正面から取り組むという。

人気コメディ「鎌塚氏、腹におさめる」第4弾! 新作は3年ぶりの新作書き下ろし

2017.08.05 Vol.695

殺人事件を解決するために奮闘
 倉持裕作・演出、主演の三宅弘城が「完璧なる執事」鎌塚アカシを演じる人気コメディー「鎌塚氏シリーズ」が帰ってきた。シリーズ第4弾となる本作は実に3年ぶりの新作書き下ろし。

 本作では生真面目で融通の利かない鎌塚氏が、あるお屋敷で起こる殺人事件を解決するために奮闘する。

 名家、綾小路家の当主であるサネチカ公爵は相当な癇癪持ちで、どんな使用人も長続きしない。そこでついに「完璧なる執事」鎌塚アカシの出番となった。相変わらずそつなく仕事をこなすアカシだったが、ある日、公爵が殺されてしまう。それも完全なる密室殺人で。警察もさじを投げる中、公爵の一人娘で推理小説かぶれのチタルとアカシは犯人を突き止めるべく動き出すのだが…。

 ヒロインのチタル役に二階堂ふみ。サネチカ公爵の大堀こういち、女中役の猫背椿といった芸達者たちに、倉持の舞台『家族の基礎』に出演した眞島秀和、シリーズすべてにアカシのライバル・スミキチ役で出演する玉置孝匡、そしてお笑いユニット我が家の矢田部俊といった個性派たちがわきを固めるという豪華な布陣。

松尾スズキが「悲劇」をテーマにプロデュース、『業音』

2017.08.05 Vol.695

15年の時を経て待望の再演
 日本総合悲劇協会というのは大人計画の松尾スズキが“悲劇”をテーマとした作品を書くためにできたプロデュース公演。1996年の『ドライブイン カリフォルニア』、1998年の『ふくすけ』と続き、この『業音』はその第3回公演として2002年に初演された。このたび15年の時を経て待望の再演となる。

 主人公は演歌歌手として再起を目指す元アイドルの女。女は自分が運転する車で、ある夫婦の妻のほうをひいてしまう。植物人間になってしまった妻に代わり、その夫と結婚させられる女。奇妙な共同生活が始まるのだが、やがて女は周囲の人間たちを不幸のループに巻き込み、負の連鎖はさらに奇怪にうねっていくことになる。

 人間の“業”とか“執念”といった生々しい感情がうごめく舞台は、普段の大人計画の舞台のつもりで見にいくと痛い目に遭うかも?

 初演で主人公の女を演じたのは荻野目慶子。その体当たりの演技で大きな話題を呼んだ。その大役に今度は大人計画の平岩紙が挑む。

番外編的なオムニバス公演 ハイバイ 『ハイバイ、もよおす』 

2017.07.10 Vol.694

 昨今では作・演出の岩井秀人の人生の周辺に起きたことを題材に、人生の深淵をのぞかせるような作品を描くことの多いハイバイだが、今回はちょっとばかり趣向を変えた番外編的な公演。

ハイバイは五反田団が毎年お正月に行っている「新年工場見学会」というイベントに2007年から参加。このイベントは両劇団に出演経験のあるような周辺にいる役者が多く参加し、数日の稽古で短中編を作り上げ上演しているのだが、本公演などとは違った実験的な作品はもとより思わぬ名作を生み出すなど、噂が噂を呼び、今ではすっかりチケット入手困難な人気イベントとなっている。

 今回はこの新年工場見学会で過去に上演された中から珠玉の名作3本と岩井の書き下ろし新作一人芝居をオムニバスで上演する。

 公演以外にも「おしえて、セクリ先生!」(2日18時)、「ハイバイシンポジウム」(3日14時)、「抽選どもども」(8日14時)、「ハイバイコメンタリー」(10日14時)と4回のプレミアムイベントを開催(イベントの詳細はハイバイのホームページで)。全体的に肩から力の抜けた感じの公演になっている。

過去作品を再創作するシリーズ『きゅうりの花』

2017.07.10 Vol.694

Cucumber+三鷹市芸術文化センターPresents土田英生セレクションvol.4『きゅうりの花』

 この「土田英生セレクション」は劇作家・演出家の土田英生が過去に上演した自作品を、自ら主宰するMONOとは別の枠組みで自身が望む俳優たちと再創作しようという企画。

 4回目となる今回は1998年に初演された『きゅうりの花』。「利賀・新緑フェスティバル」に関西の集団として初めて招へいされ、土田英生とMONOの名を全国に知らしめるきっかけとなった作品だ。その後、2002年に全国各地で上演され、今回は15年ぶりの再演となる。

 物語の舞台は後継者の不在や嫁不足に悩む過疎の町。ある日、町の活性化を図るためのイベントとして、地元に伝わる民謡をアレンジした踊りを東京で踊ろうという話が持ち上がる。住む者たちのこの土地に対する思いはさまざまで、そんな思いが交錯するなかイベントの当日を迎えることになるのだったが…。

 良質な会話劇であるのはもちろんなのだが、初演時より登場人物の年齢を上げ切実さを増すことで、より強い社会性を持った作品となっている。

本気も本気の第3回公演 劇団かもめんたる第3回公演『ピンクスカイ』

2017.06.25 Vol.693

 2013年の「キングオブコント」を制したかもめんたる。コントはもともと演劇的な要素を多く含むものなのだが、コンビ結成当初「劇団イワサキマキオ」という名前で活動していたくらい「お芝居にこだわったネタ」をしていた彼らの芸風は特に演劇に近いにおいを感じさせた。

 と思っていたら、案の定というべきか2014年にはナイロン100℃の舞台に俳優として出演。翌年には劇団かもめんたるを結成。なんやかんやで今回で3回目の公演となる。毎回キャストオーディションも行うなど、本気も本気の劇団公演だ。

 今回はヨーロッパ企画の石田剛太、ナイロン100℃の長田奈麻、劇団チキンハートの小椋大輔といったところが前回に続き出演。前回は所属劇団で見せる姿は押さえつつも、劇団かもめんたるならではの役者の使い方を見せるなど役者たちの新たな一面を見せてくれた。

 作・演出を担当する岩崎う大は「かもめんたるのグロテスクな世界観をより一層煮詰めたような妖しくも面白い演劇。笑いありエログロありなのに、後味爽やかなロングコントをご堪能あれ!」とコメントしているのだが、果たして今回はどんな作品に仕上げるつもりなのか…。

萬斎が満を持して演出を手掛ける 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演 『子午線の祀り』

2017.06.25 Vol.693

 世田谷パブリックシアターは今年開場20周年を迎えたことから、4月からさまざまな「開場20周年記念公演」を行っており、本作もそのひとつ。

 戦後の日本演劇界を代表する劇作家・木下順二の「平家物語」を題材とした不朽の名作で平家物語の一ノ谷から壇ノ浦までを平知盛と源義経を中心に描いている。

 1979年の初初演時は、総合演出者の宇野重吉のほか能の観世榮夫らさまざまなジャンルの重鎮が演出に名を連ね、ジャンルを越えて壮大な一本の作品を作り上げた。本作においてはこの時期を「第一期」、観世榮夫らが演出を務めた1999年の新国立劇場公演と2004年の世田谷パブリックシアター公演を「第二期」としているのだが、今回の上演は「第三期」の幕開けとなるものとも位置付けられるといえるだろう。

 野村萬斎は第二期から平知盛役を演じ、今回、満を持して演出も手掛ける。これまで古典芸能を現代劇に融合させ、新たで大胆な手法を用いてきた萬斎が伝説と化しているこの作品にどう挑むのか…。また、これまで狂言師・歌舞伎俳優といった古典芸能の俳優が演じてきた義経役を小劇場出身の成河が演じるなど大胆なキャスティングも大きな見どころとなっている。

出世作を16年ぶりに再演 青年団第76回公演『さよならだけが人生か』

2017.06.12 Vol.692

 今でこそ青年団とか平田オリザという名を知らない演劇関係者はいないだろうし、演劇ファンでもその作品を見たことがなくても名前を知らない人はほとんどいないだろう。そんな青年団にも名前が知られていない時代というのはもちろんあるわけで、大きく知られるきっかけとなったのがこの『さよならだけが人生か』という作品。1992年のこと。当時は「そのとき日本の演劇界が青年団を発見した」といったセンセーショナルな言葉で表現された。

 その後、2000年にリニューアル上演し、今回は実に16年ぶりの再演となる。

 舞台は東京都内某所の雨が続く工事現場。ただでさえ遅れがちなところに遺跡が発見され、工事は遅々として進まない。そんななか工事現場の人々、発掘の学生たち、ゼネコン社員や文化庁の職員などさまざまな人間たちがだらだらと集まる飯場ではユーモラスな会話がいつ果てるともなく繰り広げられていた。

 青年団史上最もくだらないとされる人情喜劇だ。

本作をもって劇団を「変態」サンプル『ブリッジ』

2017.06.12 Vol.692

 青年団の若手自主企画公演を経て2007年に劇団として旗揚げした「サンプル」が今回の公演をもち、いったん劇団としての活動を休止。今後、その名称は主宰を務める劇作家で演出家、そして俳優の松井周の個人ユニットを指すこととなる。

 サンプルは結成当初は通常の演劇公演を中心に活動してきたが、時が経つにつれ、劇場ではない場所での作品作り、サンプル・クラブに代表されるコミュニティー作り、そして松井の好奇心を形にした雑誌作りなど活動が多岐に渡ってきた。

 劇団という枠ではくくり切れなくなった今、劇団の展開を試行するなかで10周年の節目を契機に劇団を「変態」させ、第二形態を目指すこととなったという。

 今回の作品のテーマは「宗教」。コスモオルガン協会という架空の新興宗教団体の信者たちを描く宗教劇。彼らを通じて集団と宗教、現代という時代に宗教に何ができるのか、といった問題があぶり出される。

 今後、サンプルに所属していた劇団員たちが松井の作品に出演することもあるだろうが、多分今まで通りではない。また過去の公演は1つとして映像化はされていないだけに、これまでのサンプルを感じる最後のチャンスとなる。

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