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【演劇・ミュージカルに復活の兆し】good morning N°5『ただやるだけ』

2020.11.12 Vol.735

「good morning N°5」は女優の澤田育子(拙者ムニエル)と藤田記子(カムカムミニキーナ)がただただ「面白いことがやりたい、というか、面白いことしかやりたくないッ!!」という思いで2008年に立ち上げた劇団。

 作・演出を担当する澤田が描く世界は、愛情とくだらなさ、そして華やかさが満載。加えて、この2人、もともと小劇場界では一癖も二癖も…どころではない女優として名をはせる存在とあって、とにかくはちゃめちゃ。そして2人の顔の広さもあって、客演陣もとにかく豪華。

 今回の作品も「世界平和を願いながら、愛とくだらなさが全力でメチャクチャに交差する全力投球型ド派手なヘンテコリン世界。バカバカしくも号泣必至(?!)」とのこと。

 今回は劇団結成13周年記念公演として劇団初のロングラン公演を敢行。当初は全30ステージに日替わりゲストを呼び、華やかなロングラン公演とする予定だったのだが、ご時世柄、日替わりゲストは断念した。しかしレギュラー出演者自体が入江雅人、音楽も担当する中村中ら豪華な布陣となっているので、華やかさについては心配ご無用。

 なお11月1日からMotionGalleryにてクラウドファンディング( https://motion-gallery.net/projects/gmn5_cf )を実施。上演作品DVD、グッズなど全て今後一般販売の予定のないものがリターンとなっている。

【演劇・ミュージカルに復活の兆し】新宿梁山泊『唐版・犬狼都市』

2020.11.10 Vol.735

 新宿梁山泊は今年6月に花園神社特設テントで『唐版・犬狼都市』の上演を予定していたのだが、新型コロナウイルスの影響で、延期に。その公演が本多劇場グループテント企画として、11月14日から下北沢駅前の線路街 空地に特設紫テントを立てて上演することとなった。

 本作は澁澤龍彦の「犬狼都市」に想を得て描かれた唐十郎の珠玉の名作。東京の大田区の地下にあるという犬の町「犬田区」を舞台とした物語。そこに生息するしがない人間のドラマが展開される。

 新宿梁山泊の役者陣に加え、小劇場界で活躍する宮原奨伍、オレノグラフィティ、実力派俳優・松田洋治ら豪華な客演陣を迎えて送る。

 同作は状況劇場で1979年に初演。場所は新宿西口公園に建てられた状況劇場の紅テントだった。当時の状況劇場の客は新宿という街が生み出す猥雑な空気につかりながら唐の作る幻惑の世界の一員となっていた。

 開発されてしまった下北沢という街にはかつての新宿のような空気は望むべくもないが、その中で新宿梁山泊はどのような世界を見せてくれるのか…。

 新型コロナによる感染症対策として、テント演劇の定番である桟敷をなくして全席指定席のみとし、客席数も通常よりも大幅に減らし、また入場時に検温、50分に1回はテント全面で換気するなど、万全の対策を取っての公演となる。

どんどん舞台に活気が戻ってくる予感 劇団鹿殺し『ザ・ショルダーパッズ』

2020.11.01 Vol.734

 新型コロナウイルスの感染拡大防止による劇場の休館で3月の東京公演が中止となってしまった鹿殺しが劇場に帰ってくる。

 3月の大阪公演はなんとか実施したものの、他の劇団同様、そこから長く沈黙せざるを得なかった彼らだったが、8月には劇団活動の「再起動」を宣言。11月に劇団公演を実施することを発表した。

 今回の「ザ・ショルダーパッズ」は男性の衣装は2枚の肩パットのみで行われる。このスタイルは2004年の劇団公演を皮切りに、ライブハウスでの音楽劇、PLAY PARK2012、福岡演劇フェスティバルなどさまざまな公演・会場で上演されてきたもので、劇団鹿殺しの伝統表現の一つの集大成といえるもの。シンプルな肉体と、想像力の翼のみを武器に演者と観客、双方の世界を無限に解放することに挑戦していく。

 今回は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」と江戸川乱歩の「少年探偵団」の2作品をそれぞれ上演。この名作を丸尾丸一郎が戯曲化し、菜月チョビによる「ザ・ショルダーパッズ」ならではの演出で作品世界を美しく立体化するという。

どんどん舞台に活気が戻ってくる予感 ロームシアター京都 レパートリー作品 木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』

2020.10.19 Vol.734

 京都を拠点とする木ノ下歌舞伎は歴史的な文脈を踏まえつつ、現代における歌舞伎演目上演の可能性を発信している団体。

 本作は京都のロームシアター京都のレパートリー作品で昨年2月から行った初演の際には、公演地によっては追加公演も発生した話題作。当時は東京での公演はなく、東京のファンの中ではかねてから再演を望まれていた作品だ。

 木ノ下歌舞伎ではあらゆる視点から歌舞伎にアプローチすることを目的としているため、主宰の木ノ下裕一が指針を示しながら、さまざまな演出家による作品を上演するというスタイルを取っており、本作はFUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が演出を務める。

「摂州合邦辻」は運命に翻弄される2人の男女を軸に血族の悲劇を描いた作品なのだが、本作では原典とされる能の「弱法師」や説教節の「しんとく丸」などの要素に改めてスポットを当てて再解釈。“剥き出しの生”を壮大なスケールで描く音楽劇となる。

 初演でも喝采を浴びた主役の玉手御前役は内田慈が続投。俊徳丸役には声優としても活躍する期待の若手俳優・土屋神葉が抜擢された。

どんどん舞台に活気が戻ってくる予感 ミュージカル『ローマの休日』

2020.10.18 Vol.734

 土屋太鳳が朝夏まなととのダブルキャストで主演する日本発のオリジナル・ミュージカル『ローマの休日』が上演中だ。オードリー・ヘプバーンが主演した同名の名作映画を世界で初めてミュージカル化した作品で、上演されるのは約20年ぶりとなる。

 ヨーロッパ歴訪中だったアン王女が、旅の途中のローマで1日だけ自由な時間を過ごす。髪を切ったり、ジェラードを食べたり、スクーターでローマの街を走ったり、船上パーティーでド派手にやらかしたり……これまで経験したことがない時間を過ごす。そしてそこには忘れられない恋も……。土屋と朝夏演じるアン王女、新聞記者のジョー・ブラッドレー、カメラマンのアーヴィングはWキャスト。公演ごとに異なる組み合わせで上演する。好奇心旺盛な少女から凛とした王女へと変化する土屋、堂々たるパフォーマンスでオーディエンスを圧倒する朝夏、そして加藤和樹と平方元基が演じるちょっとワルだけど純情なブラッドレーのやり取り、恋物語に胸を締め付けられる。

どんどん舞台に活気が戻ってくる予感 座・高円寺レパートリー『男たちの中で~In the Company of Men~』

2020.10.12 Vol.734

 座・高円寺のレパートリー作品として昨秋、日本で初上演された『男たちの中で~In the Company of Men~』が今年も上演される。

 同作は“反骨の劇詩人”ともいわれるイギリスの劇作家エドワード・ボンドが1980年代に書いた巨大軍需企業を舞台とした作品。

 座・高円寺の芸術監督で本作の演出を務める佐藤信は劇場の演劇学校「劇場創造アカデミー」の研修生の修了上演で、ボンドの8時間に及ぶ長大作『戦争戯曲集 三部作』を上演し続けるなど、かねてからボンドの戯曲に注目してきた一人だ。

 物語は軍需企業の買収を巡り、父と息子、部下、敵対企業といった立場の男たちが二重三重の駆け引きを展開していく。シェイクスピアの『オイディプス王』や『ハムレット』的な人間関係の要素はもちろん、権謀術数にたけた6人の男たちによって繰り広げられるドラマはドラマとして単純に見応えのあるものだ。

 その一方でボンドはこの戯曲のなかで政治権力の構造や権力が人間性を奪っていくさまをスリリングな言葉と言葉の応酬で見せていくのだが、それはネオ・リベラリズムとグローバリズムに支配されつつある現代の我々にとってはただ楽しいと言ってもいられない切実な問題として提示される。さて、見た後に我々は何を感じ、どのような“気づき”を得ることができるのか…。

【ウィズコロナの演劇シーン】東京芸術祭 2020 芸劇オータムセレクション『ダークマスター VR』

2020.10.01 Vol.733

 タニノクロウが主宰を務める庭劇団ぺニノの代表作『ダークマスター』がVR作品となって上演されることとなった。

 これは今秋開催される「東京芸術祭2020」で東京芸術劇場のオータムセレクション作品として上演されるもの。

 本作は庭劇団ぺニノが2003年に初演した代表作『ダークマスター』を現在の社会状況を踏まえて新たに構想し直し、今回の上演用に新たに撮影したパフォーマンス映像を特別仕様の演劇的空間で各回20人限定でVRゴーグルをつけて観劇する。

 これまで新型コロナウイルスの感染拡大防止については各団体でさまざまな方策が取られてきたのだが、それでも不安を感じる人はいるようだ。

 こればかりは個人の感覚の問題でどうしようもないことなのだが、「ならば」とばかりにタニノは俳優をVRの世界に移動させ、1回に収容する観客数も20人までとした。

 上演と書いていいのか、上映と書くべきなのか。演劇の概念さえぶち壊すタニノの試み、というかさまざまな投げかけを観客たちがどう受け止めるのか。

【ウィズコロナの演劇シーン】Pityman『みどりの山』

2020.09.25 Vol.733

 今年で21年目を迎えた三鷹市芸術文化センターの名物企画『MITAKA“NEXT”Selection』。「今後の飛躍が期待される劇団」というくくりで劇団をセレクトするこの企画をきっかけに、これまで多くの劇団が飛躍を遂げてきた。

 今年の第3弾となるPitymanは劇作家で演出家の山下由の脚本、演出作品を上演する団体。山下は若手演出家コンクールで2013、2014年と2年連続で優秀賞を受賞している。

 その作品は日常を繊細に描写し、ドライでありながらさみしさを抱える青年たちを会話劇で描き、モザイク的にシーンを切り取り合わせる。「いちばん大きなものは、いちばん小さなものの中に」を標ぼうし、小さな部屋の片隅の“なんでもなさ”から世界を照らし出そうとしている。

 今回は妊婦たちの暮らす山間の代理母父出産施設を舞台に、男も女もみんな妊婦というちょっと不思議な世界の物語。

 公演にあたり山下は「世界が大変な状況にあるこの中で、集まることができたなら、誰かに子供を産んでもらい、誰かの子供を産み、遠くにみどりの山が盛り上がるこの作品を作ります」とコメント。いろいろと考えさせられそうな作品のよう。

【ウィズコロナの演劇シーン】asatte FORCE参加作品 ブス会*『女のみち2020~アンダーコロナの女たち~』

2020.09.24 Vol.733

 劇作家で演出家、そしてAV監督でもあるペヤンヌマキは今年7月に「テレ東無観客フェス2020」に参加し自身が主宰する演劇ユニット「ブス会*」の代表作「女のみち」シリーズ新作『女のみち特別編~アンダーコロナの女たち~』を無観客で上演し配信した。今回は劇場に観客を迎えタイトルも「女のみち2020」に改め、本多劇場版の演出で「asatte FORCE参加作品」として上演する。

「女のみち」はもともとAVの撮影現場での女優やスタッフたちの生々しいやり取りを描いたブス会*の代表作。今回は緊急事態宣言が明けた後、久しぶりに行われるAV撮影の控室を舞台に、外出自粛でうっぷんが溜まりまくった女たちが怒涛のようにしゃべりまくる。そしてコロナ厳戒態勢下で行われるAV撮影はいったいどうなるのか--といったお話。

 ペヤンヌマキは上演にあたり「『女のみち』に登場するのは、どのような状況でも“それでも生きていくんだよ”の精神でたくましく生きていく女たち。誰もが生命の危険にさらされる毎日を生きている今、この舞台を観た人が、明日もなんとか生きていこうと、ちょっぴり元気になってもらえたらいいなと思っています」とコメントした。

 舞台の上演に先駆け、9月20日には阿佐ヶ谷ロフトAでペヤンヌマキ、出演の高野ゆらこ、もたい陽子、そしてテレビ東京の祖父江里奈プロデューサーが出演するトークと『女のみち2012再演』を上映するイベントが開催される。

 舞台、トークイベントとも配信も行われる。

【ウィズコロナの演劇シーン】ミュージカル『ビリー・エリオット』

2020.09.16 Vol.733

 待ちわびていたミュージカル『ビリー・エリオット』の幕がいよいよ上がる! 主人公ビリーにも負けないぐらい踊りだしたい気分だ。

 本作は、アカデミー賞監督賞にノミネートされた映画『リトルダンサー』をミュージカル化したもの。イギリス北部の貧しい炭鉱町に住む11歳の少年ビリーがバレエとの運命的な出会いを果たし、その世界に没頭していく。映画では成長した姿を人気ダンサーのアダム・クーパーが演じて、話題を集めた。

 ビリーは、炭鉱で働く男たちに囲まれ、男として強さやたくましさをより求められる環境で育ち、バレエは女の子のものと父親からも強力な反対にあう。それでも夢に向かってステップを踏み続ける姿に周りは心を熱くし、世界は心を大きく揺さぶられた。

 ミュージカルは2005年に初演。日本には2017年に上陸した。その際には16万人を動員する大ヒットミュージカルになった。そして、今年、待望の再演を迎えるにあたり、大規模なオーディションが行われ、4人のビリーが選ばれた。お父さん、先生、兄などもパワフルなキャストが揃っている。万全の対策をしたうえで、劇場でミュージカルを見る幸せを味わってほしい。

上白石萌歌をはじめ実力派の俳優12人が揃ったPARCO劇場オープニング・シリーズ『ゲルニカ』

2020.08.28 Vol.732

 日本のみならず韓国など国外にも活動の幅を広げ、2018年読売演劇大賞及び最優秀演出家賞に輝く演出家、栗山民也。2018年紀伊國屋演劇賞個人賞受賞、鶴屋南北戯曲賞など数々の賞を受賞し、筆力に定評のある劇作家、長田育恵。PARCO劇場のオープニング・シリーズ秋の陣第1弾でこの2人の待望の初顔合わせが実現する。

「ゲルニカ」というのはスペイン北部の町の名前であり、同国の画家であるパブロ・ピカソの絵画の作品名でもある。

 スペイン内戦時にこの町は無差別爆撃を受けたのだが、その悲劇に突き動かされピカソが作品化した。本作はそのピカソの絵画「ゲルニカ」に出会った栗山が20年以上にわたり温めてきた構想をもとに長田がゲルニカに生きる市井の人々の生きざまに視点をあてた群像劇に仕立て上げた。

 ゲルニカに住む人々はよもや自分たちの町が空爆を受けるとは思っていなかった。戦争は遠くのものと思っていた。空爆、戦争という言葉を「疫病」や「天災」といった置き換えれば…。時勢柄、思わずそんな視点で見てしまいそうな作品。

 ヒロイン役の上白石萌歌をはじめ実力派の俳優12人がそろった。

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