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STAGE | TOKYO HEADLINE - Part 7
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敷居の高さなんて感じない オペレッタ「天国と地獄」東京二期会オペラ劇場

2019.11.15 Vol.724

 音楽の秋にオペラへの扉を開きたいのなら、オペラとミュージカルのいいとこどりのオペレッタで一歩を踏み出してみたら? 

 オペレッタは小さいオペラを意味する。セリフがたくさんあって演劇的な要素が多いのが特徴で、コミカルな作品も多く、ミュージカルの始まりとも言われている。

 東京二期会オペラ劇場が届けるのは、オペレッタ「天国と地獄」。バイオリン教師オルフェと妻のユリディスは倦怠期真っただ中。オルフェは妻の不倫相手である羊飼いアリステをやっつけようと罠を仕掛けるも、毒蛇に噛まれて死んだのは妻だった! 予想外の結果に喜ぶオルフェだったが実はアリステは地獄の王プルートの下界の姿。すべてユリディスを地獄に連れて行こうとしていたプルートの仕業だった。一部始終を見ていた「世論」によってオルフェはしぶしぶながら妻を連れ戻すために、神々の世界に赴くが……。

 有名なフレンチカンカンを始め、心が踊る音楽と風刺精神、笑いに満ちた明るいオペレッタ。敷居が高いなんてことは少しも感じることはなさそうだ。

描くのはしっかりとした女の友情『MONEY MONEY MONEY』劇団コノエノ!特別公演

2019.10.25 Vol.723

「劇団コノエノ!」はNYLON100℃の女優、木乃江祐希が2016年に旗揚げした劇団。

 木乃江はNYLON100℃という現在の日本の演劇界の中核をなす劇団にいながらも、「演劇を見たことのない人にもっと興味を持ってもらいたい…」と考え、旗揚げ公演から「血飛沫」が飛び交い「マジック」がなぜか行われるといった見世物小屋のような、分かりやすく見た目が派手な作品を作り続ける。「血飛沫マジック歌劇団」という異名を取るが、ストーリー自体は逸脱することはなく、描くのはしっかりとした女の友情。

 今回は特別公演ということで血飛沫マジック歌劇団の看板を下ろし、ストーリーだけで観客の心をぐちゃぐちゃにする初の会話劇をやるという。それもどストレートの。

 主人公はモラトリアム期真っ最中のフリーターの女の子。ある日、アルバイト求人誌に「時給3700円の事務」という奇妙な求人を見つけバイトの面接にやってくる。そこで働く女の子たちはみな綺麗な女子大生でモデルか女優の卵。事務の仕事など存在せず、ただ毎日、ガールズトークを繰り広げるだけで高時給がもらえる謎の会社だった…。

 お金にまつわる女子大生とおじさんの戦いを通して、お金が人を、そして価値観を変えていくさまを描いていく。今回はフィクションなのか、それとも恒例のように実話な部分もあるのか、気になるところ。

特撮ものへの鴻上的オマージュ『地球防衛軍 苦情処理係』KOKAMI@network vol.17

2019.10.23 Vol.723

「KOKAMI@network」は鴻上尚史が、さまざまな人たちと出会い、公演するために作ったユニット。これまで新作はもちろん、第三舞台時代の作品を新しい演出で上演するなど、さまざまなアプローチを試みてきた。

 今回は昨年のKOKAMI@network『ローリング・ソング』で鴻上と初遭遇した中山優馬を再び主演に迎える。

 物語の舞台は異星人や怪獣の襲撃を受けている近未来の地球。そこでは人類を守るために地球規模で「地球防衛軍」が組織されていた。しかし地球防衛軍が怪獣と戦った結果、さまざまな場所で壊滅的な被害を受けた住民たちが抗議の声を上げる。「私の家は怪獣ではなく、地球防衛軍のミサイルでやられた。弁償してほしい」などと。毎日のようにくる住民たちのクレームの処理に追われる苦情処理係は悩む。「私たちは人類を守ろうとしているのに、なぜ住民たちは文句を言うのだろうか」とか。そんなある日、突如、ハイパーマンが現れたのだった。

 円谷作品といったヒーローものや特撮ものへの鴻上的オマージュで描くファンタジーの中に数々のメタファーを埋め込んで送る、正義、真実、愛、エゴといったさまざまな問題が含まれた物語。

川村毅が共に生きた時代への鎮魂ともいえる作品『ノート』ティーファクトリー

2019.10.19 Vol.723

 劇作家で演出家の川村毅は来年、劇団「第三エロチカ」を旗揚げして40年、自身の新作戯曲をプロデュースするカンパニー「ティーファクトリー」を立ち上げてからも20年を迎える。

 そこでこの節目に「川村毅劇作40周年&還暦 三作品」と題して3作品を発表することとなった。

 その1作目となる『ノート』は川村が共に生きた時代への鎮魂ともいえる作品。

 昨年は平成の大事件に関連する死刑が大量に執行された。そして新しい元号を迎えるにあたり、平成を振り返る機運の中、平成生まれの若者たちがその事件と経緯を知らないことに川村は愕然としたという。また、死刑囚の中には同世代の人間が少なからずいたことから、還暦を迎えようという世代がどのように80年代からの40年間を生きてきたかを、その時代のかかわり方を通して描きたいと思ったという。

 物語の中では記憶を失った男の記憶をよみがえらせるためにさまざまな証言がノートされていく。そして舞台上では、川村と近い世代の観客にとってはいつか見た風景が、若い観客には教科書には載らない歴史が繰り広げられる。世代や立場によって感じ方は人それぞれの作品となりそうだ。

人気サーカスエンターテインメント集団シルク・エロワーズ最新作『サルーン』

2019.10.18 Vol.723

 カナダのモントリオールで生まれた人気サーカスエンターテインメント集団シルク・エロワーズが、『サルーン』を携えて、再来日を果たす。

 日本公演最新作となる『サルーン』の舞台は、開拓時代のアメリカ。未開の地にやってきた開拓者たちが集まる酒場で、スリルたっぷりのアクロバッティックな演目が繰り広げられる。

 本作の特徴は、ミュージシャンによる生歌、カントリー・ウエスタンの楽曲の生演奏に合わせて、アーティストたちがサーカス・テクニックを見せる“ミュージカル・サーカス”であること。音楽、アクロバット、メイクや衣装や、舞台美術などさまざまな表現を融合させて、ノンンストップで約80分、オーディエンスをくぎ付けにする。

 エアリアルやシーソーゲームなどアクロバティックでスリリングなサーカス・アクトはもちろん、ダンス、コミカルなパントマイムなどもあり。家族や仲間と、もちろん恋人とも楽しめる内容で、一緒に行くパートナーを選ばない作品。

 シルク・エロワーズは、2013年にはストリートダンスと3Dプロジェクションマッピングを駆使した「iD」で日本公演を実施、7万人以上を動員した。

森田剛、世界初上演「FORTUNE」に挑む

2019.10.14 Vol.723

 V6・森田剛主演の舞台「FORTUNE(フォーチュン)」が2020年1月から東京芸術劇場プレイハウスにて上演される。ゲーテの代表作『ファウスト』の舞台を現代ロンドンに置き換えた意欲作。イギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの新作で、日本が世界初上演となる。演出は英リリック・シアターの芸術監督を務めたショーン・ホームズ、共演に吉岡里帆、田畑智子、根岸季衣、鶴見辰吾ほか。森田は自らの欲望を叶えるため悪魔と契約する映画監督・フォーチュンを演じる。

NODA・MAP第23回公演 『Q』:A Night At The Kabuki Inspired by A Night At The Opera

2019.10.01 Vol.722

 今年6月にこの第23回公演の上演が発表された時に「ん?」と思った人は多いだろう。野田秀樹がシェイクスピア作品を手掛けることについては想像の範疇ではあるが、そこに世界的ロックバンドQUEENが絡んでくると聞いてみんなが驚いた。

 2年前に野田のもとに「QUEENが愛する日本で、彼らの名盤『オペラ座の夜』の世界観を舞台にできないか?」というオファーが来て、2年の構想期間を経て出来上がったのがこの『Q』。QはもちろんQUEENのQ。だからといってお話はQUEENにまつわる話ではなくシェイクスピア不朽の名作『ロミオとジュリエット』をベースにした“禁断の恋”を描いたもの。

 ロミオとジュリエットは悲劇の末にともに命を絶ってしまうのだが、野田は考えた「もし2人が本当は生きていたら…」と。

 ということで本作には2人のロミオと2人のジュリエットが登場。これまで広く語り継がれてきたロミオとジュリエットと“その後の”ロミオとジュリエットが語られる。

 4人のロミジュリには松たか子に今回がNODA・MAP初参加の上川隆也、広瀬すず、志尊淳。広瀬は初舞台でもある。また竹中直人がNODA・MAPに初参加というのも興味深い。

 10月8日から東京芸術劇場で1週間の上演後、全国を回って再度東京に戻って来る。

熟女バーを舞台にしたおばさんたちのお話『こどものおばさん』ふくふくや

2019.09.20 Vol.722

「ふくふくや」は1999年に女優・山野海を中心に設立された劇団。

 座付き作家の「竹田新」というのは山野の別名なのだが、山野はこの間、ドラマや映画などで貴重なバイプレイヤーとして存在感を増していくなか、ほぼ年1ペースで公演を重ね、今回で20回目の公演となる。

 その作品は毎回、多様な客演を迎え、家族、親子、兄弟、夫婦、仲間、恋人の間に渦巻く「情」を竹田独特の感性でえぐりだす、いわゆる「人情喜劇」。しかしそのスタイルは「笑って泣く」といった人情喜劇ではなく、「笑いながら泣かされる、泣きながら笑わされる」といった独特のもの。

 今回は熟女バーを舞台にしたおばさんたちのお話。その熟女バーの控室では今日も着飾ったおばさんたちがお喋りに花を咲かせていた。しかしある日そこに若い男が現れたことから絡みに絡まりほぐしようのない悲喜劇が幕を開けるのだった。
 数々のドラマや映画、舞台で活躍する女優の熊谷真実が客演。タイトルの「こどものおばさん」というのはまさに熊谷そのもの? 人生観や恋愛観といったちょっと深いテーマに触りながらも、無邪気なおばさんたちの喋りと笑いと遊びが深刻さを吹き飛ばしていく。

 28、1、2日の14時の回にはアフタートークもある。

時空を超え、ニューヨークの旅を味わえるかも。ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」

2019.09.15 Vol.722

 先日開幕したミュージカルの代名詞となっている作品のひとつ「ウエスト・サイド・ストーリー(WSS)」が話題を集めている。これまでに数えきれないほど来日し、ミュージカルファンに指を鳴らさせてきた作品だが、今回はいつも以上に注目されている。というのも、ぐるりと360度客席が回転する劇場「IHIステージアラウンド東京」で上演されているためだ。

 物語の舞台はニューヨークのウエスト・サイド。非行少年団のシャークスとジェッツが縄張り争いを繰り広げるなかで、元ジェッツのトニーとシャークスのリーダーの妹マリアに出会い、恋に落ちる。許されない恋だが、お互いの気持ちをぶつけあう。一方、シャークスとジェッツの戦いは過熱し、ついに決闘となってしまい……。

 誰でも一度は耳にしたことがあるであろう名曲の数々と一緒に綴られるドラマティックなストーリーは、この劇場ならではの臨場感たっぷりの映像やサウンド、生演奏によって、よりダイナミックかつエモーショナルになって、オーディエンスに迫ってくる。演出のデイヴィット・セイントによれば、「マンハッタン中を旅できる、体感型の作品になっている」という。

 時空を超え、ニューヨークの旅を味わえるかも。

のぞき見するような緻密な会話劇が展開される『あつい胸さわぎ』iaku

2019.09.09 Vol.722

 iakuは劇作家・横山拓也が2012年に大阪で立ち上げた演劇ユニット。

 作品は、暗黙のうちに差別的なものとして扱われる職業や場所、性的なマイノリティーといったアンタッチャブルな題材を多く扱っている。

 そのスタイルは徹底的にセリフ・会話にこだわったもの。ストレートプレイの中で他人の議論・口論・口喧嘩をのぞき見するような緻密な会話劇が展開される。

 横山のオリジナル作品を日本各地で発表していくこと、また各地域の演劇作品や情報を関西に呼び込む橋渡し役になることを目標としていることから、劇場公演はもとより、小さな座組でカフェやギャラリーなど場所を選ばずに全国を巡るミニマルなツアーなども積極的に行っている。

 今回の作品は二人暮らしの娘と母の物語。大学生の娘とその母はダイニングは散らかり、脱いだジーパンがそのまま放置されているようなだらしない生活をしていた。そんな中、2人には互いに意中の男性がいた。2人の暮らしを中心に彼女たちの生活圏内にある、恋愛、仕事、健康、将来などを持ち前の会話劇で描き出す。

ダメっぷりを見事に表現する俳優に注目「オフィスコットーネプロデュース 大竹野正典 没後10年記念公演 第4弾『さなぎの教室』」

2019.08.27 Vol.721

 オフィスコットーネでは2009年に不慮の事故により48歳の若さで亡くなった関西の劇作家・大竹野正典さんの作品を2012年から数々上演してきた。

 今年は大竹野さんの没後10年の年にあたることから、その集大成として「大竹野正典 没後10年記念公演」と銘打ちさまざまな企画のもと作品を上演している。

 その第4弾となる本作は大竹野さんの代表作である『夜、ナク、鳥』と同じく、2002年に実際に起きた4人の女性看護師による連続保険金殺人事件をモチーフに松本哲也が『夜、ナク、鳥』のオマージュとして新作を書き下ろす。

 松本は宮崎県出身でこれまで宮崎弁で芝居を作ってきたのだが、今回も舞台を宮崎に移し、より閉鎖的な人間関係から彼女たちが犯行に至るまで、またその後の心理描写を緻密に描き出す。

 4人の看護師を演じるのは佐藤みゆき、吉本菜穂子、森谷ふみ、今藤洋子。それぞれ早くから小劇場で活躍してきたが、「修羅の生きざま」を演じるにふさわしいキャリアを着実に重ねてきた。

 また本作ではそれぞれの夫役の俳優の存在感も大きなポイントとなるのだが、今回も絶妙なダメっぷりを見事に表現する俳優たちが揃った。

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