才能を持つ人をまとめる、という強み。 「人をまとめるのが好き。それが起業の原点」
今や世界中に広まった原宿のKAWAIIカルチャー。その象徴的存在・きゃりーぱみゅぱみゅをはじめとする人気アーティストを擁し、唯一無二の原宿カルチャーを世界中に発信し続けているユニークな企業アソビシステム。“カルチャーを創る”をビジネスにした中川さんの強みとは。
高校時代から行っていたイベント運営がアソビシステムの発端だとか。
「ええ、アソビシステムはもともとファッションショーとクラブイベントという2つのイベントからスタートしています。ファッションショーは美容学校や服飾学校などの専門学校の学生たちとチームを組んでやっていまして、やがて全国規模でイベントを行うようになりました」
起業の意志は学生時代から?
「一応、大学3年のときに就活したんです。音楽会社やタレント事務所、ファッションブランドとか。でも結局、自分で起業することに決めました。当時僕は、大学生、ファッションショーの運営、クラブイベントの運営、バイト、テニスサークルという生活をしていたんですが、それぞれにいろんな人たちがいました。大学のサークルの仲間は就活して就職したいという人がほとんどで、一緒にイベントをやっている人やバイト仲間は “これがやりたい”というものを持っている人が多くて、クラブ系の人はかなり年上の人も何で食べているか分からない人がいて(笑)。いろいろな人を見たとき自分は今、型にはまったらダメだなと思ったんです。自分には特にできることがなかったというのもあったと思います。ファッションの才能があるわけでも、DJができるわけでも、テニスが上手いわけでもない。それで、裏方でそういう人たちを支える仕事がいいなと思ったんです。かっこよく言うとプロデューサーですね。思えば高校のころにすでにそういう思いがありました。僕にとっての起業や経営は、その延長線上にあると思います」
自分のやりたいことと強みを早くから見極めた中川氏。しかし…。
「アソビシステムの前、最初に作った会社を失敗しているんです。学生イベントを無理に拡大させようとしたことが敗因ですね。規模を大きくすれば費用もかかる。しかもスポンサーもつけずチケット収入だけでしたから」
その会社を解散した翌年にアソビシステムを立ち上げた。
「高校時代、イベントで屋号のような感じで使っていたアソベシステムというネーミングを少し変えてつけたんですが、このせいで思わぬ苦労をしました。ふざけていると思われたのか銀行で口座を開けなかったんです。家族ぐるみで利用していた信金で何とか口座を開かせてもらいましたけど(笑)。当時は銀行もまだそういうところが厳しくて、名前だけでなく僕らのやっていることも理解してくれなかった。今ではSHTのような施設もあるし少しうらやましいですね(笑)」
青文字系や、きゃりーぱみゅぱみゅなど世界に発信できるアイコンも生んだ。
「アソビをやっていく中でも失敗は数ありますよ。僕らはサブカル、ニッチの分野にいますけど、それをマスに近づけるのは良いこともあるけど危険なことでもある。規模を大きくしてしまうと、無理が生じて、自分たちの主体が失われる可能性もあるんですよね。大手企業と組んで大規模イベントをやっていたときは、そういうことも勉強しました。海外進出したときもトラブルはいろいろありました。欧米からアジアまでかなり回りましたが、日本からのツアーを組まず現地の人を動員できていますし、まあ成功といえるかと(笑)」
今後見据えることは。
「新しい形のコンサルティングを作ってみたいなと思っています。僕らはもともとカルチャーを作るということを念頭に置いています。コンテンツも持っていて、組み立てもできて、PRもできる。コンサルや代理店だけではできないことを僕らがやれればビジネスポイントになるんじゃないかと。今始めている地方創生のプロジェクトもそこにつながるもので、現地の人の思いを僕らが形にしていければと思っています。あと幼稚園を作りたいんですよね。クリエイティブなことを、もっと幼いころから始めるべきだと思うんです。日本が強かったのって技術力、クリエイティブ力が勝っていたときでしょう。AIが追い付かない部分は日本の強み、得意な部分と重なると思う。それを今後もっと頑張っていかないと、と思うんです」
自分の強みを見極めることは大事。
「企業のなかで活躍するのもいいけれど、もし何か自分が強みを持っているなら起業に挑戦したほうがいいと僕は思います」
イベント運営を経て、07年にアソビシステムを設立。「青文字系カルチャー」の生みの親であり、原宿を拠点に地域と密着しながら、ファッション・音楽・ライフスタイルといった、原宿の街が生み出す“HARAJUKU CULTURE”を、国内はもとより世界に向けて発信し続けている。自主イベント『HARAJUKU KAWAii!!』を2011年〜全国各地で開催し、近年は、KAWAIIのアイコン・きゃりーぱみゅぱみゅのワールドツアーを成功させた。2014年に新プロジェクト「もしもしにっぽん」を発表し、日本のポップカルチャーを世界へ向け発信すると同時に、国内におけるインバウンド施策も精力的に行っている。また、きゃりーのプロデューサーでもある中田ヤスタカと共に未成年でも楽しめるクラブイベントを神社、世界遺産等さまざまな異色のロケーションで開催するなど、地方創生にも力を入れている。
平均的な1日のスケジュール
8時30分〜 ジム
10〜19時 打ち合わせなど
19〜26時 会食
起業家データ
【起業時の年齢】26歳
【起業時の資本金】1000万円
【起業後の収入】設立3年目から軌道に乗る。
【座右の銘】前進あるのみ
Company Profile
アソビシステム株式会社
【所在地】〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-29-3
【URL】asobisystem.com
【設立】2007年6月
【資本金】1000万円
【社員数】43人
【事業内容】プロモーション事業、イベント事業、マネジメント事業、クリエイティブ制作事業
【沿革】2007年6月設立。2012年5月アソビプロダクション株式会社、アソビミュージック株式会社、アソビワークス株式会社を設立。2013年8月、ASOBILIFE株式会社設立。2014年2月、ASOBIRIGHTS株式会社設立。2014年8月、アソビシステムホールディングス株式会社設立。2014年12月、もしもしにっぽん株式会社設立。2014年12月、原宿初の観光案内所「MOSHIMOSHI BOX」を設立。
自分を他の人と比べて
「こうあるべき」と考えないことが大事だと思います!
中川悠介
中川悠介セミナー(アソビシステム株式会社 代表取締役)
【開催日時】2018年1月23日(火)19時〜
【場所】Startup Hub Tokyo
「青文字系」の生みの親にして、原宿カルチャーを世界に発信し続けるアソビシステム株式会社の中川悠介氏が登壇。きゃりーぱみゅぱみゅを通して広まった原宿の“KAWAII”文化は海外のセレブも魅了。しかし中川氏率いるアソビシステムが作り出したのは“ブーム”ではなく“カルチャー”だった。自らのスタイルを貫きながら成長を可能にする、中川氏の視点とは。