猫店員がお出迎え 猫本専門書店「Cat’s Meow Books」
猫好きの間で話題になっている、猫が店員として働く本屋さん「Cat’s Meow Books(キャッツミャウブックス)」。と言っても猫がいそいそと接客をしているわけでもなく、レジを打っているわけでもない。「そこにいるだけで癒される~」という猫の持つ素晴らしい能力を発揮することで、お客様に居心地のいい空間を提供しているのだ。
店員は元保護猫。お給料はゴハン
東京・世田谷。三軒茶屋から2両編成の世田谷線で1駅の西太子堂から徒歩1分。三軒茶屋から歩いても7~8分の住宅街にあるかわいい一軒家がそのお店。
店内には新刊・古本の猫本がずらり。単行本から文庫、写真集に絵本ととにかく“猫”に関する本だらけ。書名に猫がついていなくても、表紙に猫の写真やイラストがなくても、何らかの形で猫が登場する猫本の専門店だ。
そんな猫本だらけの店内の奥、脱走防止の引き戸を開け進むと、そこには自由気ままな4匹の店員たちがくつろいでいる。ここではビールやソフトドリンクを飲みながら、本を読んだり猫たちを愛でたりできるまさにパラダイス。店員猫はすべて保護猫で、本の売り上げの10%は保護猫活動をしている団体へ寄付される。ちなみにお給料はゴハンとのこと。
猫カフェではなく猫本屋です
ニンゲンの店主・安村さんは約1年前に、会社員でありながらこの店をオープンした。もともと出版社や書店といった本に関係する仕事ではなかったが、いつかは大好きな本に関わる仕事をしたいと思っていたそう。しかし町の本屋さんがどんどんなくなっていく中、昔ながらの町の本屋さんを開店するのは難しいと考え“掛け算”でお客さんが来る仕組みを作ろうと思ったと言う。掛け算とは「本×〇〇」。この〇〇に入るところに“猫”を置いて「本×猫」の書店というコンセプトが出来た。
「でも絶対に猫カフェにはしたくなかったんです」と安村さん。「最初は猫がいる部屋へ入るのに入場料をいただこうと思っていたんです。そうしたら本を買っていただかなくても、売り上げになるので本屋として成り立つかなって。でもそれをやってしまうと猫カフェになるからやめました。だから最初に考えた事業計画とは全然違う収益構造になりましたけど、結果的には本の売り上げ比率が8~9割と当初の予定より高かったのでほっとしています」
猫きっかけで本の入り口になればいい
「新刊は平積みにしているので分かりやすいのですが、古本は自分の中でテーマを決めて棚差しにしているので、お客様が手に取られて違う場所に戻したらすぐに分かります」というように、ジャンル別になっている棚もあれば、安村さんの遊び心が見られる棚もちらほら。じっくりと見て、その法則性を推理するのも楽しい。
「『向田邦子ふたたび』という本は猫が出てくるのですが、文庫の棚差しにしていたら向田邦子さんのファン以外手に取らないですよね。でも表紙が猫の写真なので、そこで手に取って、向田さんのほかの作品を読むようになったと言われるお客様がいらっしゃったんですね。そういう意味では、猫がきっかけで本の入り口になればいいと思っています。また、内田百閒の『ノラや』も有名ですが、タイトルは知っていてもちゃんと読んだことがあるという人は意外と少ない。ですから表紙が猫に切り替わった時の本を置くようにした。そうしたらずっと売れ続けているので、今は定番となっています」と本との出会いの場もしっかりと提供している。
パラレルキャリアとSNS。こんな時代だからこその経営戦略
「本業を持ちつつパラレルキャリアとしてやることで、精神的な余裕にはなっていると思います。参入が難しいと思われる書店ですが、SNSにより昔に比べ個人書店はやりやすいんじゃないでしょうか。うちはオープン前からSNSを戦略的に使っていました。お金をかけた宣伝はできないので、SNSと連携して情報を拡散すること、また取材していただきやすいコンセプトを打ち出すことで多くの方に知っていただけるようにしたいと思っています」
と、その辺りの話は同店でも売っている『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』(集英社)に詳しく書かれているので、ぜひ一読していただくとして、店員さんの働きぶりをチェックすると…安村さんの膝に乗って気持ちよさそうに甘えている。
「欲を言えばお客様の膝に乗って欲しいんですけどね。店主の膝に乗っても一銭にもならない(笑)」。
いいんです。猫はそこにいるだけで。
【住所】世田谷区若林1丁目6-15
【電話番号】03-6326-3633
【営業時間】14?22時
【定休日】火曜
【URL】https://www.facebook.com/CatsMeowBookshttps://www.facebook.com/CatsMeowBooks