【インタビュー】スガダイロー「スガダイロートリオ」5年ぶりのオリジナルアルバムが6・19リリース
『君の見る夢』は結構古い曲。俺、演奏した記憶がなかった
去年はソロでオリジナルアルバム『季節はただ流れて行く』を発表した。そのほかにもスガダイロートリオ、リトルブルー、スガダイロー・中村達也 DUOとさまざまなバンド、ユニットで演奏するが、やりたいことによってその形態をチョイスしている?
「そこはあまり関係ないですね。計画的にはやっていない。同じ曲でもやる人によって違ってくる。やっていくうちに曲はだんだん育っていくんですが、誰とやるかで育ち方も変わってくる」
意図的に“こう育てよう”というわけではなくて?
「やってみて、“さて、どうなっていくんだろう?”というようなやり方。あまり押し付けたり、細かいコンセプトやビジョンはなくて、やっているうちに見えてくる感じ」
すべてがフリー?
「だいたいそう。たまにコンセプトを決めてやることもあるけど、結局なるようにしかならない」
スガのアルバムは曲が熟成された段階で録れる曲は録ってしまい、その中から選曲して1枚のアルバムにするという形を取るという。コンセプチュアルなアルバムは最初から決めて録ることもあるが、最初からそういうことを考えないでスタートし、決めないで録ってその中から選ぶ。こういうアルバムの作り方は特有? ジャズってそういうもの?
「それは人によると思う。俺は氷山の一角みたいなやり方が好きなタイプ。“これしかない”というものを出すのは嫌。いくらでもある中から“今回はこれを出す”みたいな感じがいい」
ライブではアルバムの中から演奏しながらも、出さなかったところからも演奏したり。
「そう。それくらい余裕のあるほうが俺は好き。たくさんある中からその時その時に一番いいものを出す。いろいろなカードを持っているといった感じ」
野球やサッカーも底辺が広いほうが強い。
「“この11人しかいない”って感じじゃ、ダメ(笑)。俺はそういうタイプ。でも育たなかったら容赦なく切り捨てる。新曲でも“こりゃダメだな”と思ったら」
でも10年くらい寝かして良くなる曲もあるかも。
「演奏しなくなっても一度曲の形にしたものは、ブロックじゃないけどばらしてもなんとなく組める。新しいパーツにしたりとかもできるんで、そこも無駄じゃない」
4~5年経って、心境の変化があって引き出すことも?
「ある。だからあまりむきになって演奏もしない。ひっこめちゃう」
それを待ってるファンもいるかも。
「たまに言われます。“あの曲やらないんですか?”って。突然言われてもだいたい弾けない。忘れちゃってて(笑)」
ずっとライブを追いかけて、5年ぶりくらいにそんな待っていた曲が聴けたらその人は幸せだ。
「今回の一番最後の曲『君の見る夢』はそんな感じ。これは結構古い曲。俺、演奏した記憶がなかったんだけど、演奏したのを聞いたことがあるって人がいた」
そういう曲はまだまだある?
「どれくらいあるかは分かんない。でも引き出しを開けたら、“あれ? これなんだっけ? あああれか?”みたいなことはよくあるし、出してみたら意外に良かったというのはある」
今回カバーした中でハービー・ニコルスは他のミュージシャンと比べちょっと異質な感じがする。
「ハービー・ニコルスというのはマイナーで不遇なピアニスト。モンクやエリントンみたいにみんなが演奏するような曲じゃない。あまり演奏する人もいないし研究も進んでいないから、何をやっているのか分からないという謎のピアニストなんです。それでここ1年以上、ライブでこの人の曲を取り上げて演奏していました」
謎のピアニスト?
「謎ですね。他のピアニストでこの人の曲を演奏しているのを聞いたことがない。謎です」
でもその存在や、曲自体はみんな知っている?
「誰も手を出さない。手出し無用というか」
手出し無用とは?
「なんか理論がよく分からない。それに技量が試されちゃうんで怖いなって思う。どうやって料理するか。聴く人が聴けば、どれだけ自分がその人と対峙できているかが見えてしまう」