【インタビュー】スガダイロー「スガダイロートリオ」5年ぶりのオリジナルアルバムが6・19リリース
ハービー・ニコルスは謎のピアニスト。他のピアニストが演奏しているのを聞いたことがない
今まで対峙したことがある人がいないから、その対峙の仕方が正しいかどうか分からない?
「うん。だからやってみたって感じ。今回はその中でも1番わけの分からない曲を選んだ」
確かにこのニコルスは情報が一番少ないかも。
「そう。すぐ死んじゃってるし。不遇ですね。弾けば弾くほどイライラしてくる(笑)。“なんなんだよ、この曲は?”ってなってくる(笑)」
自分の中でとらえきれない?
「そういうところを結構狙っているというか、とらえられないようにしているんだろうなって」
そういう人は今までは。
「うーん、なかなかここまでの人はいないかな。くせがなかなかのもの。何度真似してみても“この人、何でこういうふうに弾いたんだろう?”というのはよく分からない」
今まで手を出してこなかったものに今回なぜ取り組んでみようと?
「特に理由はなかった。思いつき。こうなったらやってみようと。去年あたりから“ちょっと勉強不足だな”と思って、人のやってることも勉強しなきゃダメだということを自分に課した時期があった。それでニコルスは聴くのは好きだけど弾くの嫌だなって思っていたんだけど、ちょっと弾いてみようと思った」
今回収録した『Wild Flower』は原曲に比べてアレンジは?
「してないです。ニコルスのは結構原曲通りに弾いている曲が多いかな」
それはニコルスをとらえきれないなかであまりアレンジしてしまうのは怖かったとか?
「そうですね。自分の中にもっとこの人が自然に入ってきたときに変えられるかな、みたいな。だから今回は俺の中では。絵でいえば模写に近い感じかも」
逆にいうと今は模写しかできない?
「できない。自分なりのニコルス像が出せない」
これは後々どうなるかというのは聴く側も本人も楽しみなのでは?
「そう。でもニコルス自体、聞く人がいないから、これをいろいろアレンジしても誰にどう認識してもらえるんだろう?みたいなところはある(笑)。モンクなんてポピュラーだからファンも多いし、いろいろ変えたら“おお、こういうふうに変えたんだ”って聴き方ができるけど、この人の場合はなにがなんだか(笑)」
模写しているのに変えていると思われたりして。
「模写しても認識されないんじゃないかとか(笑)。それくらい変な曲」
地道に有名にしていく作戦?
「そう。いろいろなところでちょこちょこ弾いて、仕込んだりしてる。いろいろな人と共演した時に譜面とか渡しているから、ちょっとずつ知られてきているんじゃないかって(笑)」
スガのオリジナル曲の中にも気になる曲名の曲がある。『Acoustic Kitty』とか。
「Acoustic Kittyというのは1960年代にCIAが35億円かけて作った兵器の名前。猫に盗聴器を仕掛けて、人になつかせて盗聴させるっていう」
SFの話じゃなくて?
「本当に作ったらしいですよ。ただAcoustic Kittyは実戦投入されて、数十秒でタクシーにはねられて死んでしまった(笑)。余計なものがついているから朦朧としていたのかな。はねられて35億円がパーになった(笑)。ブルーピーコックっていう生きている鶏で温める爆弾っていうのもあって、一時期、そういう“トンデモ兵器”が好きになった時期があった。いや、今でも好きだけど(笑)。変なことやっていて日の目を見ないものが面白い」
スガの曲はただでさえ聴いてみるまでどんな曲に仕上がっているのか分からない油断のならない曲ばかり。今回は寅さんといいAcoustic Kittyといい、曲のタイトルにも油断のならないアルバムとなっているようだ。