【インタビュー】戸田真琴の思う「孤独」とは? そして「考える」ことの大事さとは。

(撮影・蔦野裕)

「次はフィクションに挑戦したい」


 本書での論理的な思考でのアプローチと頭の回転の速さから「頭のいい人」という印象を受ける。本書の中でも学生時代の学校でのエピソードもいくつか挟みこまれているが「勉強すること自体にあまり意味が見出せない」という。「自分より点数が低くて落ち込んでしまう人がいるのは嫌。そこで自分が一番であることを誇りに思えたらもっと勉強もすると思うが、それはあまり意味がない」とも。

 勉強はともかく、他のことについて一番になるといった欲求は?
「あまりないです。AV業界にも賞レースがあるんですけれど、ああいうものも結果としてファンの皆さんと団結して賞をいただくことができたりして、大切な思い出になっていますが、そもそもファンの方が望んでくれなければそうはならなかったと思います。賞レースがあると、獲れないと悲しんだり謝ってくる人がいたりもして、誰かを悲しませない為やより喜ばせるためにと思って賞を欲しいと思ったんですね。自発的にナンバーワンになりたいと思うことは実際は全然ないんです」

 本書の中で「議論が嫌い」と言っていたので、同年代の人と意見をぶつけ合うようなことはなかっただろうが、考え方が違うとか幼く見えるということはあった?
「そういうものだと思っていたので、それで見下したりとかはなかったです。みんなのほうが普通かもしれないし。それに言語化しなかったりできなかったりするだけで、考えている人はいっぱいいると思いますし。でも数でいえば自分のほうが変だと思うしかないので、そこに関してはコンプレックスでしかないと思っています」

 今年はこの本の他に映画も撮って映画監督としてもデビューした。本業の仕事も多かった。今後の活動については何か考えている?
「今までも特に考えていなくて。全部“やらないといけないな”という時期が来たからやっているという感覚です。だからどうなっていこうということは…。もともとあまり未来の計画を立てることができるタイプじゃないんです。ただ、これはできるかどうかは分からないんですけど、フィクションに挑戦したいと思っています。

 映画も結果として自伝をベースにした内容になってしまって、来年もう一冊、文体を変えたエッセイ本が出るんですが、結果として自分の話をしすぎることになってしまって、もう少し自分の秘密を守ったままで創作がしたいなと思っていて。“これからどうしようかな?”と思っているので(笑)。なので映画になるか本になるかは分からないですが、新しい物語を作るということにチャレンジしたいです。物語は苦手なんですけど、そういう気持ちはあります。まあ…本当にやるかどうかは分からないです(笑)」

 インタビュー中でも語られたが戸田の使う「孤独」という言葉には多くの意味が含まれる。読む人の置かれた状況によってとらえ方はさまざまだろう。それも含めていろんな立場になって「考える」ことによってこの本はどんどん味わい深いものになりそう。
(TOKYO HEADLINE 本吉英人)

『あなたの孤独は美しい』
【著者】戸田真琴【発行】竹書房【価格】本体1500円(税別)
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