「外界から守られた部屋にいる子どもみたい」-齊藤工、安藤裕子にズバリ言い当てられ驚愕
(撮影・朝岡英輔)
齊藤さんは、外界から守られた孤独な部屋を持っている
安藤「実は一番最初に思ったのが、“齊藤監督が出演したらいいんじゃないか?” って。齊藤さんには“個の世界”というものがある気がしていたから。仲間も多いし、人との繋がりもたくさんあると思いますが、齊藤さんの心はすごく狭い部屋のなかに入っているんじゃないか、だからこの物語に共起するのはご本人ではないか、と。齊藤さんって、役者然ともしていないし、かといって芸能人と括るのも違うし。作品づくりのときに見える顔はどうにも外界に触れ慣れている魂じゃないんです、子どものようで(笑)。外の世界から守られた壁のなかにあるひとりの部屋が見えてきたんです」
齊藤「おっしゃるとおり……というか(笑)。自分がなんでこんなに映画というものを自分の生活に取り入れているかというと、孤独という点で、物語やその主人公と交点を持つことがあるから。“えっ、なんで分かるの?”という感覚。人間って、ポジティブさよりもネガティブな部分で、他人に普段見せないような“何か”が繋がったときに、確かなものを感じるのではないでしょうか。だから、その狭い部屋が今回の作品のなかにある、“百年の孤独”の世界に繋がっているのかもしれない。ご指摘いただいてちょっとびっくりしました」
安藤「とはいえ監督という立場ではスタッフはじめ周囲の人に受け入れてもらえなかったら何も進まないですよね。たとえばカメラマンにこういう絵を撮ってほしい、とか。だから自分の願いをかなえる術は“大人の齊藤工”として人脈やアイデアを育てていると思うんですけど」
齊藤「それから、そういう“部屋”って、皆それぞれに持っているとも思います。だからこそ自分が作るものや関わるものには、見ているその人の“部屋”に少しでも届くような何かになれるかについて考えていて。それはポジティブで綺麗なものだけじゃなくて、むしろ“誰にも見せない自分のことが、なんで分かるんだろう”という瞬間。自分がそこに惹かれるからこそ、一瞬でもそれを宿すことが映像を作る意味なのかなと思っています」