横粂勝仁が語る菅義偉首相「期待している。でも官房長官の姿勢のままで総理になってはダメ」

収録中の横粂氏(撮影・蔦野裕)

菅さんにしかできないことをやったら素晴らしい。ただし“やったら”


 現在は前述の法律解説系のものと、安倍晋三首相が辞任した際には「菅総理当確」をテーマに配信するなど、その時話題となった出来事をタイムリーに解説するスタイルのものの二本立てで展開中。元衆議院議員として今回の安倍辞任→菅総理誕生はどう見ている?
「良くも悪くも永田町的だなと思って見ていました。小泉進次郎さんが“党員投票をすべきだ”と言ったりしていましたが、あれも含めて“ザ永田町”。私は進次郎さんについては自称“永遠のライバル”なので、進次郎さんのことは応援していますが、あれはパフォーマンスにしか過ぎないですよね。自民党には、途中辞職の時は党員投票を省略できるという党則があるので、今さら騒いでも遅い。プラス、前回、安倍さんが健康上の問題で辞められて福田さんが総裁になった時も、その後、福田さんが辞められて麻生さんが総裁になった時も全部、党員投票は行われていないんです。だから今までと同じことがまた起きているだけで、今回騒ぐことではないんです。それがダメだというのであれば、自民党の党則自体を途中辞職の時も常に党員投票をやるというようにルールを変えるか、あるいは総理自体を国民が選べるように首相公選制にするといったことをあらかじめ議論しておくべき。そういったことを放り出しておいて、今さら騒いでも“永田町ってこういうルールで動いているんだからあたりまえじゃん”ということですね」

 小泉氏のスタンドプレーも含め、他の議員もそれぞれの役割を演じる中で総裁選が終わった?

「そうですね。でも私自身は菅さんには期待しています。私は神奈川11区で小泉さんと戦ったので、事務所は神奈川県にありまして、神奈川県でのイベントなどにはよく出席させていただきました。そういう時は党派関係なくいろいろな党の政治家が集まってくるんですが、そこで菅さんとは交流もありました。無所属になってからは菅さんの後援会幹部の方が私に声をかけてくださって、忘年会に参加させていただいたこともあります。まさに敵を作らない政治家の典型。菅さんのことを嫌いと言っている人は見たことがありませんし、そうやって培ったいろいろな人脈を生かしている方です。プラス世襲でもないし、派閥のドンでもないのに首相になったので、今後、そういった派閥のドンたちをうまくコントロールして、菅さんにしかできないことをやったら素晴らしいことだなと思いますね。ただし“やったら”です」

 官房長官時代の記者の質問に対しての「それはあたらない」と明確な理由を応えない受け答えの手法をみるとちょっと不安は感じますが…。

「あのままの姿勢で総理になってはダメです。でも官房長官としてはある意味、適切だった。官房長官はしゃしゃり出ずに揚げ足を取られないようにする。そういう役目ですから。なので官房長官に適した人が、そのまま総理になってはダメだと思いますね。総理として今後一皮むけてどう変わられるかですね。変わらなければ失望は大きいと思います。あと永田町では、何かを変えたければ責任ある立場ではないところで吠えたりパフォーマンスをするよりも、粛々と雑巾がけをして責任のある立場になってから言えということがよくいわれます。まあ、当初はそういう志を持ってやっていても、そのうちにそういう気持ちも忘れてポストを得ることが目的化していく人もいるんですけどね。菅さんはどっちなのか。今まではその地位を得るために我慢していて、そういった自分の政策を推し進めていくのか、それとも我慢することが当たり前になって体にしみ込んでしまっていてポストを得ることが目的となっていた人なのか。そこは今後見ていかないと分からないですね。本当に権力を持って自分がやりたいことをやるために今まで雑巾がけ的に官房長官を見事に務め上げたとするならば、それはすごい方ですね」