レ・ロマネスクTOBI、初小説『七面鳥』は父へのラブレター
『七面鳥 山、父、子、山』の取材はカバーと同じグリーンの衣装で統一している
ご自身の体験もかなり反映された?
「小説にしたことで思い出がどんどん広がっていく感覚がありました。創作というより、自分が父親に乗り移ったようにフミャアキの記憶や母親の気持ち、妹の気持ちなどいろんな人の感情を追体験し、文章にしていきました。最終的には僕が4歳の時に植えられたスギの気持ちにもなって、そもそも電柱になる予定だったのに、今は切る人もいなければ運ぶ人も加工する人もいない……そんなことも考えました。
書き始めた時点で、おしまいの章は何となく念頭にありましたが、当時はそこを意識しないで生きているじゃないですか。まだ将来何が起こるか分からないわけで、4歳では4歳のその瞬間に感じた気持ちを大切に、あまりその先を書いてしまわないように意識しましたね」
執筆を終えて今のお気持ちは?
「大きいことを言えば、この小説は父に対するラブレターみたいなもの。もう面と向かって『愛してる』とは言えないけれど、両思いになりたい気持ちを模索して、この形が僕の中では一番ベストなラブレターかなと思っています。
子どもにとって親って一人で、それが社会のすべてだと思って育つものですが、読んだ方に『こんな人もいるんだ』と気持ちを楽にしてもらえればうれしいです。僕は自由に生きている親を見て育って、それでも僕くらいには育つので(笑)、『自由に生きていいんだな』と感じてもらえれば」