為末大「僕らは五輪・パラリンピックから “何を受け取り、どう変わるのか”」

大会から「何を感じ、どう変わるか」

 混乱の中、7月23日、いよいよ開幕を迎える東京大会。最後に、為末が考える「開催の意義」とは。

「五輪・パラリンピックは“平和の祭典”と言いますが、突き詰めると、選手ではなくて、見ている側が主体ということなんです。選手だけインスパイアされても、世界平和にはなかなかつながらない。せいぜい数万人規模です。そうすると、五輪・パラリンピックを見ている人たちが、そこから“何を受け取って、どう変わるのか”だと思うんです。スポーツ自体には、良いも悪いもなくて、使い道によってはプロパガンダに使われるし、世界平和のためにも使われるという“無色透明だけど、ちょっとパワフルな道具”という感じがしています。では、どうやって使うのかを考えた時に、例えば、1人の選手が一生懸命走っている様子をテレビで見たとします。きっとどこかの国の選手だからということを超えて、1人の人間が一生懸命やっていることに感動すると思うんですね。つまり、“私たち”という枠組みが、人種や国籍ではなくて、“人類”になるということなんです。そうやって、人類共通のものを見ながら、いろいろな隔たりや枠組みを超えるようなものを演出できるのが、五輪・パラリンピックが持つ大きな力かなと思います。いろいろな意見はありますが、“自分たちは同じ船に乗っている仲間なんだ”と思うような瞬間が一瞬でもあれば、それが開催する意義なのだと僕は思います」

(TOKYO HEADLINE・丸山裕理 )

為末大…1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年7月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。Youtube為末大学(Tamesue Academy)を運営。主な著作に『Winning Alone』『走る哲学』『諦める力』など。
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