【インタビュー】C&K 彼らが 紅白を目指すワケ。

 唯一無二の歌声とハーモニーで魅了するシンガーソングライターデュオのC&Kがまた大きな目標をぶち上げた。「ROAD TO KOUHAKU」――、日本の大みそかを彩る国民的なイベント紅白歌合戦への出場を狙うという。それを自ら「無謀な挑戦」と呼んでおどけて見せるが、もちろん本気。なぜそこまで出演したいのか。聞けば、彼らを応援したくなるのは当然だった。(本紙・酒井紫野 撮影・蔦野裕)

CLIEVY

夢だった紅白出場が、だんだん目標になった

 C&Kが「紅白歌合戦に出場したい」と宣言したというニュースが耳に入ってきたのは、昨年リリースしたベストアルバム『CK IT’S A JAM 〜 BEST HIT UTA 〜』のタイミングだったと記憶している。その後、年末のカウントダウンライブで盛大に紅白宣言セレモニーが行われ、それもまた多くのメディアで見出しになった。

 それからしばらく経つが、「紅白出場宣言」の効果は出てきている。

CLIEVY「紅白宣言はしましたけど、基本やっていることは、それ以前と変わっていないんですよ。ただ、やらなきゃいけないという思いが強くなったりはしてるかもしれないですけど」

 紅白がタイトルに入ったライブツアー、無料ライブの企画、新しいプロジェクト。まもなくリリースされるアルバム『55』の制作と、これまでやってきた以上に精力的に活動しているように見える。

 宣言以降、これまでしてきた活動で収穫はあった?

KEEN「収穫……うーん。紅白歌合戦出場は、自分たちが想像していた頂よりもはるかに高い山なんだということははっきりと分かりましたね。出場基準が明確に分からないというのもありますけど、世の中を揺るがす何か、C&Kなのか、僕らの曲なのか、ライブなのか、何かがムーブメントにならないと出られないのかなという気もしています。そういう意味で、全然まだまだ高い山だなって思っています」

 紅白歌合戦が、国民的かつ国内最大級の音楽イベントであることは間違いない。誰が出場するのか、どの歌を歌うのか、衣装はどうなのかと、テレビ離れがどんなに叫ばれていても、紅白歌合戦は師走の最大の関心事だ。とはいえ、今はさまざまなメディアがあり、この一年の日本の音楽を総括するイベントも多数ある。それでも紅白にこだわるのかと疑問も浮かぶ。

CLIEVY「紅白歌合戦って誰でも知っている番組で、そこに出場できたなら誰でもすごいと思ってくれる。家族で見る番組です。僕たちは、C&Kを始めた時から“音楽で親孝行したい”っていう気持ちがあって、そうするためには紅白歌合戦と思っていました。親もそうですし、老若男女に分かりやすいと思うんです」

KEEN

ファンの夢になった紅白、本気で返すしかない

 紅白を意識するようになったのは、いわゆる若者特有の“アレ”だったと苦い顔で振り返る。

KEEN「若さゆえの勢いっていうか、もの知らぬ者たちのそういうやつです(笑)」

CLIEVY「出演できるように頑張ろう!なんていうのじゃなくて、視聴者として見ているときに、俺たちだって出られるんじゃないのって。カラオケで歌ってるただの若者2人が、俺たちが軽く歌えば余裕でしょって。自分たちの歌、やってることに自信も持っていましたしね」

KEEN「当時から、今もそうだけど、どんな会場でライブをするにしてもお客さんを盛り上げられる自信はありました。お客さんがほぼいない、いるのはスタッフだけみたいなイベントに出ることもあったし、お酒を飲むのが目的のお客さんがメインのクラブでも歌ったし、そういう環境のなかでやってきてるからアウェイな場所に出れば出るほどその自信が強くなっていくんです。一人でも振り向かせることができたら俺の勝ち、そんな気持ちでしたね。もちろん今でもその気持ちはあるし、胸の中では燃えてて、さらに熱くなっています」

「紅白出場は、一番最初の夢。それがだんだん目標になってきた」と、CLIEVY。ライブを重ね、多くの楽曲を世に送り出してきて、「今年は具体的にどうするかってやってる感じ」なのだという。

 出場宣言をしてしまったのだから、具体的にならざるを得ないのは当然だが、なぜこのタイミングだったのだろう。

CLIEVY「紅白はずっと僕らのテーマなんです。衣装のカラーは赤と白だったし、いつまでもテーマにしてて、紅白目指してるんだってやり続けてる。でもそれじゃ埒が明かないじゃないかって思うんです。紅白に出ます!って宣言してやってダメだったらダメ、今後赤と白は使わないことにしよう、そのぐらいのつもりでやろうって。そう決めたって感じなんです。もしかしたら手が届くんじゃないかってところまで来たからの宣言ではなくて、いい加減このテーマも終わりでいいんじゃないか、本気でやってみて、テーマを捨てにいくつもりなんです」

KEEN「紅白に行くことは応援してくれる人たちの夢にもなっているし、そこに対しての僕らが何を返せるのかっていうところ。夢だ夢だって言い続けていてもダメでしょう。結果はどうあれ“本気”で返そうとするしかない」

“本気”というが、これまでだってC&Kは“本気”だったはずだ。それなら今回の“本気”は何が違うのか。

CLIEVY「KEENも言ってましたけど、シンプルです、本当に。紅白に出場できる基準は分からないですから、まず自分たちでできることは、実際はこれしかできないかもしれないけど、CDをたくさん売るってことです。夢だ夢だって言い続けていても、CDが売れなかったら何の結果も残りませんから。それで、自分たちが出向いていくことでCDが一枚でも多く買ってもらえるようになるなら行こうじゃないか、って思ったんです。ライブに足を運んでくれる人がC&Kの作品も買ってくれるなら、ライブに来て作品も買ってもらえるようにしようって。その思いを反映したツアーを考えて、やっています」
 それが最新ツアー『CK無謀な挑戦状 Case3〜紅白への道!紅白へGOGO!55分ライブ!!日頃の感謝を込めて39価格〜』。このライブ、タイトルは長いが、ライブ時間は55分と短い。ただ内容はとんでもないことになっている。ライブ終了後、アルバム『55』を予約してくれた人にもれなく握手をしている。それゆえにライブ時間は55分間。55には紅白へGOGO!の意味もある。

CLIEVY「世の中にはCMを打てばCDが売れるアーティストもいるんでしょうけど、僕たちにそういう力はありません。ただ、握手したこの人が僕らのアルバムを買ってくれてる、一枚一枚の向こうにある顔が見えているんです。メディアに出て行って今度新しいアルバムが出ますって告知するっていうのに比べたら、体力も奪われていきます。ライブをして、予約してくれた人と全員握手するんですから。でも、しっかりと手ごたえがある。僕らはこうしないと売れないなら、自分たちで現場に出ていくんです」

 そもそもC&Kの年間ライブ本数は多くて、ツアーも年に1〜2本あったりする。会場も150人のライブハウスから3000人クラスまでさまざまだ。その本数もサイズもほとんど変えずに、2人は「ライブもするし、ライブと同じだけ握手会もする」のだ。

KEEN「今のツアー以前から、ツアーでは『地元です。地元じゃなくても、地元です。』って、いろんな町を地元化していこうってつけられたタイトルでずっとやってきたんです。自分たちの活動のポイントがライブだから、今、こういった形式でやってるっていうのもあると思います」

CLIEVY「繰り返しになっちゃいますけど、僕らにできることって、本当にそれしかないんです。ライブをすること、そして現場に行くこと。頭で考えるよりも、自分の体を使ってやる以外、本気なんてないのかなって思います。CMタイアップとかチャンスを来るのを待っているだけじゃ、どうにもならない」

KEEN「俺たちは本気でやれることをやる、後は支えてくれる大人たちに、みんな僕らにパワーを結集してくれ! 一緒にやってくれって言うしかない」
CLIEVY「そうだね、僕らが出した本気に無駄を作らないようにしてくれるように助けてくれるのが周りの大人たち、スタッフだと思うんです。どうすればCDがよりよく買いやすくなるのか、もっと早く予約ができるようにすればいいのかとか、どうしたら出た結果をうまく世に反映させることができるのか、とか。僕らには分からないところを助けてくれる。だから、本気出すから、一緒にやってくれ!だよね」

 テレビ、新聞、雑誌やラジオといったメディアにC&Kの文字が躍るのも、紅白を目指す彼らを応援する本プロジェクト『C&K HEADLINE』もまた、そのひとつ。彼らはもちろん、彼らの周りの大人たちがC&Kの本気にまいって、応援せずにはいられなくなっている。ファンの応援も日に日に熱を帯びている。本プロジェクトにも多くの人が賛同し、協力している。C&Kの本気度も、さらに高く上昇していくことになるだろう。

 C&Kが紅白出場を果たすまで、今後もいくつものピークがあるだろう。直近では、佳境に向かいつつある55分ライブ+握手会スタイルで行われている現行のツアーがフィナーレを迎え、ニューアルバム『55』のリリース。そして、CLIEVYとKEENそれぞれの地元で行われるスペシャルなライブがある。そのひとつひとつが紅白出場へと続く道、「ROAD TO KOUHAKU」なのだ。KEENは「これまでやってきたことがあって、地元化だ地元化だってずっとやってきたツアーやライブがあって、その先にあったのが紅白歌合戦への出場だった、そいういうことなんだと思います」と話す。

 ニューアルバム『55』は26日にリリースになる。宣言以降の活動の軸になったライブ、先にも出てきた『CK無謀な挑戦状 Case3〜紅白への道!紅白へGOGO!55分ライブ!!日頃の感謝を込めて39価格〜』をそのまま音源にしてしまったようなアルバムで、C&Kらしいアプローチの作品だ。

CLIEVY「ライブでやっているそのままをアルバムにしたいと考えながら、作ったんです。だから、制作するにあたってとくに悩ましかったところもほとんどなくて、作ろうというときには、もうできあがっていて、残り一曲をどうしようかなって思ったぐらいです。このアルバムに限らずなんですが、僕らはいつも楽曲自体がライブで成立しないのは楽曲じゃないくらいの気持ちで音楽と向き合っているんですけど、いつも以上にライブそのままで、つめこんだという意識です。ライブの場合、初期衝動としてですけど、ダンサーが踊れないライブはライブじゃないと思っていて、例えバラード曲であってもクネクネと体を揺らして気持ちよく踊ってもらえるようなものがいいって思っているので、そういった部分もいつも以上に考えました。そこはやはり、C&Kの根本にあるのがブラックミュージックだったりするのが大きいと思います」

 R&Bだったり、ファンクだったり、レゲエだったり、ポップスだったり。もちろん、J-POPならではの良さも。アルバムはそのすべてをインクルードしている。収録曲はバラエティー豊かだがすべてC&Kの色に染められていて、それぞれの楽曲に心を揺さぶられる。これがC&Kの音楽のスタンス、JAMだ。彼らはカッコいいものをどんどん取り入れて、自分たちの新しい色を作り出す。「ただ、そういうことをやってるのは僕たちだけじゃなくて、意識せずにやっている人たちもたくさんいますけどね。僕たちはそれをJAMって言ってるだけ」と、CLIEVY。

CLIEVY「音楽を頭で考える、解釈する人って多いですけど、僕らはもっと熱で感じたいし、感じてもらいたいんですよ。ジャンルで語るんじゃなくて、感じる。体で発しないものは響かないと思うんですよ」

KEEN「音楽って、自分にとってありかなしか、気持ちがいいか、そうじゃないか、しかないと思うんです。ジャンルとか、あの人っぽいからって聞いてたら、もう既に先入観をもって聞くってことだし……そういう聞き方も悪くはないですけどね」

CLIEVY「ただ、格付け番組を見てるみたいな気分になるんですよね」

 55分一本勝負のライブ。それがアルバムという一つの作品になり、紅白出場へとつながっていく。そのためか収録されている曲順も「今やってるライブのセットリスト通りぐらい」なのだそう。アルバムをリリースしてそれを携えてツアーをする一般的なアプローチとは異なるのもまた、本作のユニークなところ。

CLIEVY「そうかもしれないですね。東京の初日はアルバムの曲順と同じセットリストだった。今思うと、あれは今回のツアーのなかでもレアだったかも」

KEEN「来てくれた人からしたら、聞けるのはほとんどが新曲、知らない曲ばっかりっていうね(笑)。チャレンジではあったと思いますけど、僕らはどんな状況にあっても盛り上げられる自信はありますから」

CLIEVY「僕らって楽曲の制作途中でゲリラライブをやっちゃったり、曲が完成した瞬間に“今からライブやるよ”って作業をしているスタジオに来てもらって聞いてもらったり、急にライブハウスを借りて演奏してみたり。そういうスタイルで、作品として発表する前に見せちゃうことが多いんですよね。根本的に隠さなくていいと思ってるからかな。カッコ悪いって思われたくないから隠す人、多いですよね。ブランディングだとも思うんですけど、僕らはダサい部分を見てもらって、そのうえでカッコいいシーンを見てもらいたいと思うんです。そしたら感動も増すだろうし。素の部分を出す、という美学……? そうじゃなかったら、できた時点でライブをやろうと思わないだろうし、歌詞カードを見ながらライブなんてしません(笑)。そう考えると、今のツアーでアルバムが出る前に収録曲でライブやってるって、僕らにとっては、あまり珍しくないことですね」

 アルバム収録曲のほどんどはすでにライブで披露されている。それどころか何度も何度も歌われまくっている。収録時よりもぐんと成熟したり、すでに新たな段階に至っているものさえあるとか。

KEEN「逆のパターンですよね。できあがった時のほうが良かったんじゃないかなって思うものもあるんです。ライブでやりながら試行錯誤して、やりすぎて。今は四苦八苦しながら理想に近づけようとしている、そんな自分がいるんですよ。アルバムを聴いてからライブに来ていただく方がいたら、その姿を含めて、自分を見ていただけらいいなって思いますね」 

 アップでもミッドでも、バラードでも、2人が言うように、踊れるもの、体が揺れだす楽曲ばかりだ。

CLIEVY「制作にあたって、長めに時間をとることもできて、合宿をしたんです。だから今回の楽曲づくりは、テーマを決めて、2人で作ったものが多いです。スタイルとしてはむしろ昔のやり方ですね」

 知り合いが所有する山の中にある廃業したペンションに、アレンジャーの小松さんと一緒に、機材を持ち込んで、作業。朝9時に起きて10時から夜は深夜2時まで。その間に自分たちで自炊もする毎日で、合宿は1週間ぐらい続いたという。「車もない状態で、ずっとそこにいたので。ほぼ遭難状態だったかも」とCLIEVY。KEENも「ずっとこもっていたので山を下りたら下界は明るかったですね」と笑う。

 そんな状況はさておき、言い換えれば、制作方法の原点回帰。2人にいい影響ももたらしたという。

KEEN「今回の合宿は自分のためにも良かったなって思ってるんです。一人での作業だと集中できなかったり、迷路に迷い込んじゃうことが本当に多いですし、そこからまた自分を切り替えたりするのに時間がかかったりもするんです。だけど今回の合宿では、相方との意思が疎通する瞬間とか、これいいねっていう瞬間が多かったりして、昔を思い出したのもあるし、成長できたかなという感じもあるんですよね」

「持ち込んだスピーカーで作るとか、どこでも制作できるのはカッコいいと思う」と、CLIEVY。気の置けない仲間の声がガヤでアルバムに収録されていたりして、リラックスした環境もまたアルバムにいい影響を与えているという。

CLIEVY「地元の人たちとの触れ合いがあったりして、そこの町に再生計画が進行中だったりしていて、野外ライブやるときにはC&K来てよ!ってつながっていったりもしてるんです。いいですよね。僕らはずっと人と人とのつながりでやってこられた、だから今ここに立てているんだなと思うことばかりです」

KEEN「そういうことを感じられる環境に置いてもらえることが多かったよね。モニターがあって、ライブしてくださいって言われてステージに上がれば、すぐ音が鳴ることが当たり前……なんて、今でも思えない(笑)。たくさんの人に支えられてるんです」

 さて、気持ちよく踊れる最新のC&Kサウンドを詰め込んだだけでなく、彼ら自身の立ち位置を再確認する意味でもスペシャルな作品となったアルバム『55』。本作発売後には、さらに特別な試みが控えている。CLIEVYとKEEN、それぞれの地元でのワンマンライブ。デビューしてから今まで、全国各地でライブをして「地元じゃなくても、地元です」と地元化してきた彼らが、本当の地元でライブを繰り広げる。特に、CLIEVYの地元小山でのライブは入場料金無料のフリーライブ。55分の条件もこの日のライブは例外で、150分間たっぷりと最新のC&Kサウンドと美声、2人のハーモニーを聞かせてくれる。

 いつか、できたら今年にも紅白歌合戦のステージへ——。どんな会場でも盛り上げる自信があるという彼らだから、きっと振り切ったパフォーマンス、そして唯一無二の歌声で視聴者を圧倒させるはずだ。早くそれを見たい。

【C&K HEADLINE(2017年夏発行)掲載】

もっとディープなC&Kが読める「ROAD TO KOUHAKU」

 毎月発行されているC&Kのオフィシャル誌。C&Kのリラックスしたロングインタビューではツアーでのエピソードや最新作にまつわる裏話。素や普段着の表情のC&Kに触れられるスナップ集などで構成されている。スタッフやライブを支えるダンサーのインタビューなど、読みどころ満載だ。C&Kをもっと知りたいなら要チェック。詳しくはC&Kオフィシャルサイトで。
C&K(シー・アンド・ケイ)……CLIEVY(クリビー)とKEEN(キーン)からなる男性2人組シンガーソングライターユニット。  ディスコ、ファンク、ソウル、レゲエなどのブラックミュージックをルーツにもち、フォークや80年代の歌謡曲、クラブミュージックまで幅広いジャンルをカバーする音楽性が特徴で、自らそれをJAMと呼んでいる。2010年に『梅雨明け宣言』でデビュー。アーティストとして進化を続け、“ネクストブレイク”の期待が高い新人10年目。現在は紅白歌合戦出場を目標に活動を展開している。