【インタビュー】芦田愛菜×石橋陽彩 話題の2人が初共演!14歳が出会ったかけがえのない夏

 幻想的な海の世界と生命の神秘を描いた映画『海獣の子供』が、6月7日に全国公開される。数々の映画やドラマで幅広く活躍する女優・芦田愛菜と『リメンバー・ミー』のミゲル役で一躍注目を浴びた石橋陽彩。話題の2人が14歳の同世代初共演を果たした。
[芦田愛菜]ヘアメイク・久慈拓路 スタイリスト・浜松あゆみ[石橋陽彩]ヘアメイク・佐藤真希(撮影・蔦野裕)

今、最も注目の14歳同士が初共演



 自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、夏休み初日に部活でチームメイトと問題を起こしてしまう。母親と距離を置いていた彼女は、長い夏の間、学校でも家でも自らの居場所を失うことに。そんな琉花が、父が働いている水族館へと足を運び、両親との思い出の詰まった大水槽の前にたたずんでいた時、目の前で魚たちと一緒に泳ぐ不思議な少年・海とその兄・空と出会う。琉花の父は言った。「彼らは、ジュゴンに育てられたんだ」と。明るく純真無垢な海と、何もかも見透かしたような怖さを秘めた空。琉花は彼らに導かれるように、それまで見たことのなかった不思議な世界に触れていく…。

 不器用な14歳の女子中学生・琉花を演じた芦田愛菜と、物語の鍵を握る少年・海を演じた石橋陽彩。脚本を読んだ時の印象は?

芦田愛菜(以下:芦田)「生と死というテーマが浮かびました。琉花は自分が生きているという実感から“死”ってどんなものだろうと“生”の立場から死を見ていると思うんですけど、空くんとか海くんは、自分がいつか死ぬということが分かっていて“死”から“生”を見ていて。それまで生と死って正反対なものなのかなと思っていたけど、実は隣り合わせなのかな、と感じました」

石橋陽彩(以下:石橋)「新たな世界というテーマかなと。映画を見て、僕たちが知らない海の世界、たとえばクジラや生き物の神秘。そういう未知の世界が見られる映画かなと感じました」

 自然界を独特の線使いと漫画表現で描き、読者を魅了する漫画家・五十嵐大介の長編作『海獣の子供』。映像化が難しいと言われていた同作を、映画『鉄コン筋クリート』で第31回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞のSTUDIO4℃が、満を持して映画化。海の匂いや風まで感じるような、五感を震わすアニメーションを実現させた。作品を見た2人の感想は。

芦田「映像と音楽、お互いがお互いを引き立てあっていて、命が宿っているなと感じました。この作品は命の誕生、生命の神秘など、明確な答えがある映画ではないと感じました。映画を見たときに感じることがそれぞれ違うと思うけど、それでいいと思っています。正解を求めるんじゃなく、そのときに心で感じたことや、体全体で感じたことを大切にしてほしいと思いました」

石橋「海の風景や魚が動く様子、電車の走る姿を自分で考えながら原作を読んでいました。だけど、思っていた風景や映像をはるかに上回っていました。音も思っていた曲と違ったり。たとえば、琉花が学校から走って帰るシーンなんかは、カメラが先に動いているなど、カメラワークにもこだわっていたのですごいなと思いました」

 映像に加え、音楽も見どころの一つだ。劇中の音楽を担うのは、世界的な作曲家であり、映画音楽界の巨匠・久石譲。長編アニメーション映画の音楽を担当するのはスタジオジブリ製作の『風立ちぬ』、『かぐや姫の物語』が公開された2013年以来となる。原作の世界観を深く描き出すために全編書き下ろしを実現させ、海の静けさから荒々しさ、さらには登場人物の心情に寄り添った細やかさまで、ダイナミックかつ繊細な音色を奏でる。芦田の思い入れのある場面も、そんなワンシーンからだった。

芦田「水槽で海くんと初めて出会うシーンが好きなんです。音楽がだんだん盛り上がっていって、琉花が“何か不思議なものに出会っちゃったぞ”という、何かが始まる高揚感や期待感が表れていて好きです。あと、あのシーンは水の動きに迫力があって、ダイナミックで、躍動感があるので、海くんと最初に出会うシーンはやっぱり好きですね」

 映画の登場人物と2人は、同じ年の14歳。演じた役どころには共感する部分も多かったのではないだろうか。

石橋「そうですね。海くんはとにかく元気で活発。砂浜のシーンでは琉花の手を引っ張って空くんを探しに行くし、思ったことをすぐに行動に移す子です。あと、喜怒哀楽がよく表れていて、豊か。自分の考えに素直なところは、僕に似ているなと思いました。演じやすかったです」

芦田「琉花は言葉では多くは語らないんですが、心ではいろいろなことを思っている子。自分の気持ちを誰かに分かってほしいのに、うまく言葉にして伝えることができない、もどかしい気持ちを抱えている女の子です。私自身もそういう気持ちはすごく共感できるなって思いました」

 自分の思いを言葉にして伝えることが上手という印象だが…。

芦田「自分の気持ちを正確に伝えるのってすごく難しいです。ポジティブなことは言えても、ネガティブなこと、たとえば悔しい気持ちを素直に“悔しい”と言えなかったり。自分に素直になれない、という表現が良いかもしれません。私自身にもそういう瞬間はあるので、琉花の気持ちはよく分かりましたね」
 共に若手の第一線で活躍する2人。映像と声優、それぞれの芝居において違いや工夫はあるのだろうか。

芦田「映像でのお芝居だと、ちょっとした目線の動きとか仕草とか、そういうところで表現できる部分がたくさんあるんです。でも、今回は声だけで気持ちを伝えなきゃいけないので、そこがすごく難しかったです。アニメの吹き替えは、この子はどういう子なんだろうといろいろ想像して、キャラクターを一から作り上げていくような感じ。そうしたところに自分も参加できている気がして、難しいと同時にやりがいも感じますね」
石橋「動くお芝居も声優のお仕事も、いったん自分に置き換えています。自分だったらどうするかを考えるのは共通していると思います。映像のお芝居では、実際に動くので感情も入りやすいんですが、声だけになるとより想像力が重要になってくるなと思います。声のトーンで印象が変わってくるので、音の調整がすごく大事。そこが声のお仕事の難しさでもありますね」

 役を演じる上で苦労したことは。

石橋「演じる前に、最初に自分に置き換えてストーリーを考える、というキャラクター設定が難しかったです。海くんはとにかく明るいので、声のトーンを明るくしながら出すのが大変でした」

芦田「琉花はモノローグ(心の中の独り言)が多くて。心の中で思っていることはたくさんあるので、そこは豊かに感情を入れて話すことができるけど、いざ人と話すとなると、自分の気持ちが伝えられないという女の子。その違いは意識しました」

 アフレコでは渡辺歩監督にもサポートしてもらった、と2人。

石橋「監督がアドバイスをくれて、本当にやりやすかったです。海くんはとにかく明るいので、シーンに合うように、声のトーンを調整しました。具体的には、ワントーン、ツートーン上げて話すように心掛けました」

芦田「監督がブースの中にいて、一緒にやってくださいました。ワンシーンごとに琉花の気持ちだったり、監督の作品に対する思いだったりを演じながらたくさん伺うことができたので、演じやすかったです。そうやって常に監督とコミュニケーションをとって、話し合って、こだわってやらせていただいたので、監督の思う琉花と私の思う琉花が重なっていくような気がして、キャラクター作りがしやすかったです」
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