ナイツが語るコロナ禍での漫才

ラジオから生まれた一冊『ナイツ 午前九時の時事漫才』


 時事ネタ漫才で人気の漫才コンビ「ナイツ」は自らがパーソナリティーを務めるラジオ番組『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』(TBS系、土曜9時~)のオープニングで毎回、漫才を披露している。2015年10月にスタートし、約5年。この度、膨大な数のネタから厳選した77本を集めた一冊『ナイツ 午前九時の時事漫才』が発表された。番組が終わったばかりのナイツに本のこと、最近の漫才のことについて聞いた。

「Withコロナ」はネタ作りに影響するのか?


 今年4月に新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が発令されると「ステイホーム」などといわれ、街から人が消え、庶民の生活が一変。「新しい日常」なる言葉が生まれた。芸事の世界にもその影響は及び、寄席や劇場など人が集まるところは閉鎖。テレビの収録も滞った。行われてもソーシャルディスタンスが求められ出演者の間は不自然な距離が取られるようになり、飛沫感染の危険が叫ばれると出演者間に透明なアクリル板が設置されるようになった。

 5月23日にフジテレビで放送された『ENGEIグランドスラム』に出演時は2人の間に飛沫感染防止のためのアクリル板がありました。緊急事態宣言が解除され、再開した寄席でもアクリル板を挟んで漫才を?

土屋「寄席ではアクリル板はないですね」

塙「テレビでも最近はなくなっているという話を聞きました」

土屋「コンビ間は大丈夫というところもあれば、というように局によってもいろいろだったようです」

 ああやってアクリル板を挟んで漫才をやるというのはどういう気分でした?

土屋「僕はリモートで離れて漫才をやった時にちょっとやりづらさを感じていたので、アクリル板があっても近くにいるほうがやりやすかったですね。離れてやるよりは全然よかった」

 アクリル板を挟むことで普段より若干離れているように見えましたが。

塙「まだそれでも、僕らはできないわけではないんですけど、中には絶対にできないというコンビは何組かいたみたいです。叩いたりしないと漫才のリズムが出ないという人たちは断ったという話は聞きました。僕らはもともと頭も叩かないし、営業に行ったらハンドマイクでやるときもあるので、そこまで気にはならなかったですね」

土屋「距離感に関してはラジオでずっと前から、舞台とは違う距離でやっていたので慣れていたのかもしれないですね」

「Withコロナ」といわれる昨今、世の中のさまざまな価値観が変わっています。こういったことはネタ作りに影響する?

塙「6月から寄席が復活した時に“いつものネタを淡々とやっても絶対受けないだろうな”と思いました。コロナが流行ってしまって、コロナに対する不安を抱えながら見に来ている人たちが多いから、そこの気持ちを代弁するようなネタをしないといけないな、と思いました。それを入れないと絶対にお客さんはつかめないんだろうなという感じは今もなんとなく思いますね」

 周囲の芸人さんも?

塙「コロナのネタをがっちりやる人もいれば、フェイスシールドとかをして漫才をやったりする人もいました。お客さんはみんな笑いに来てはいるものの、コロナというものが頭のどこかにあるので、そこをまず1個乗せたほうが話しやすいのかなとは思います。やりすぎちゃうとまたいろいろ言われることもあるんでしょうけど、そこになんにも触れないのも、空気感として難しい。だからコロナネタみたいなものは芸人はみんな考えているんじゃないですかね」

土屋「寄席だとコロナに関する話に対する反応は日によって結構違います。それに朝から何十組もの芸人がコロナの話題に触れた後で上がる時は普段と微妙に反応が違う時はあります。そこは時事ネタをやる身としては難しいところではありますけど、うまくバランスよくやるのがいいと思います」
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